第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「帰ってきたら、ちょうどすみれちゃんが、
お店の前にいたの。せっかくだし、
新作の試食してもらおうと思って♪」
「あぁ。たしかに他の人の意見も聞きたい。
檜原さんの感想、いつも的確だしな。」
「でしょー?」
「じゃ、用意するわ。ココ、どうぞ。」
「あ、奥の部屋使っていい?」
岩泉さんがカウンターの席を促してくれるけど、
ひろみさんは奥の個室に行こうとした。
「あぁ。じゃあ、できたら持ってくわ。」
「ひろみさん⁈
あの、お休みなのに、個室使っちゃ…」
「いいのよ。たまにはすみれちゃんと
女同士でおしゃべりしたいもの♪」
片付けとか余計な仕事を増やしてしまって
申し訳ないと思ったけど、
ひろみさんは、気にしていないようで、
個室に連れて行ってくれた。
「徹くんちでは、
春人と遊んでくれてありがとうね。
春人、すごい喜んでて、
またすみれちゃんに会いたいって。」
「ほんとですか?嬉しい。
あ…今日は春人くんは…?」
そうだ…春人くんが幼稚園お休みで、
せっかくお店もお休みにしたのに…。
「今日はわたしの姉も来てたから、
夕方まで姉も一緒に
ネズミーランド行ってたの♪」
「…⁈ネズミーランド…」
思わずさっき及川さんと話したコトを
思い出してしまう…。
「そう。で、春人は姉に任せて、
わたしとハジメくんは明日の仕込みに来たから、
今日は春人は大丈夫!」
「そうなんですね。」
「だから、すみれちゃんの話も
たーっぷり聞く時間あるんだけどなぁ?」
「え⁈あの…別にわたしは…」
ジッと大きな目でひろみさんに見つめられ、
思わずあたふたしてしまう。
「隠さない隠さない♪顔に書いてあるもの。
一人になりたくなかったから、
ウチに来てくれたんじゃないのかな?
何かあったなら、話聞くくらいはできるから。
よかったら、話してみたら?」
「ひろみさん…」
ひろみさんの優しいことばに甘えてしまい、
わたしはゆっくり及川さんのコトを話した。
わたしの失恋直後に出会った
及川さんの最悪な印象…
でも、仕事を通してわかってきた
及川さんの凄さや優しさ…
勝手に言ってしまって申し訳ないけど、
及川さんには好きな人がいるコト…
なのに…告白されたコト…