第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
わたしが向かったのは、赤坂の"岩泉"…
ひろみさんのトコロだった。
とはいえ、ひろみさんは仕事中のはずだし、
ただ、お店で普通にご飯が食べられれば…
そんなコトを考えながら、
お店に向かうけど、
また思い出すのは及川さんのコト…
この前来た時は、及川さんと一緒だった…
突然タクシーに乗せられて…
帰りは及川さんとワインバーに行って…
それから…
ダメ…及川さんのコトなんか、
考えたくないのに…
わたし、もっと冷静でいられたはずなのに…
及川さんのコトになると、
全然落ち着かない…
早く気持ちを落ち着かせたくて、
早歩きでお店に向かって、
やっと着いたお店の入り口には
"本日臨時休業"の札が…。
そんな……⁈
「すみれちゃん?」
諦めて帰ろうとした時に
後ろから声を掛けられ、ハッとして振り向く。
「ひろみさん⁈」
そこには食材を持ったひろみさんがいた。
「来てくれたのにごめんなさいね。
今日、春人が休園日だったから、
お休みにしちゃって…」
「いえ…確かめずに来ちゃったので。」
ひろみさんの顔を見ただけで、
なんだか少しホッとした。
「…すみれちゃん、何かあった?」
「え…?」
「ね、ウチに来たってコトは、
ご飯食べてってくれるつもりだったのよね?」
「…?はい。」
「じゃ、せっかくだから寄ってって♪」
そう言ってひろみさんは、
食材を持っていないほうの手で、
わたしの腕をギュッとしてくる。
「あの⁈でも、お休みじゃ…?」
「うん。でも、明日の下準備と、
新作考えててハジメくんも中にいるの。
すみれちゃんが試食してくれると助かるなー。」
「でも…」
ひろみさん…気をつかってくれてるんだよね…
仕事中なのに…迷惑掛けちゃ…
「はい!決まりー!早く入ろ?」
「え⁈ひろみさん⁈」
結局、ひろみさんに言われるがままに、
お店の中へ入ると、いい匂いがしてきた。
「ハジメくん、ただいま戻りましたー。」
「おかえり。お?檜原さん?いらっしゃい。」
「あの、すみません、お休みなのに…」