第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「あ、ごめんごめん!
檜原さんらしいなというか、
仕事に対してそう思えるって、
なかなかできないコトだよなって思って。」
…?
褒められてる…?
「檜原さんのそういうトコ…好きだな。」
「え…?」
机を挟んで向かいにいる及川さんは、
ジッとわたしを見つめながら、
とんでもない発言をした。
好き…?
わたしを…?
…って、違う‼︎
及川さん、わたしの"そういうトコ"って…
仕事に対する姿勢のコトを言っただけじゃない‼︎
ダメだ…ほんと自意識過剰‼︎
わたしが必死で頭の中を整理していると、
突然及川さんが手を握りながら、
さらに顔を近づけ、
真剣な目をしてもう一度、
とんでもないことばを放った。
「好きだよ。」
「…っ⁈あ…あの…⁉︎はい‼︎
仕事…もっと頑張りますから…⁈」
ビックリして思わず手をはなして、
立ち上がってしまうと、
及川さんはクスクス笑っていた。
「仕事はもう十分頑張ってるじゃない。
そういう意味じゃなくて、
一人の女性として好き…
ってコトなんだけどな。」
「…っ⁈⁈」
え…?
今度こそ意味がわからない。
好きってどういう意味⁈
わたしを⁈及川さんが⁈
だって…及川さんが好きなのは…
「か…帰ります!
サンプルはお預けしますから…」
「え⁈ちょっ…待って‼︎」
わたしは及川さんの制止を無視して、
バッグを掴んで応接室を飛び出し、
早足でエレベーターへ向かった。
さすがに及川さんも
応接室の外まで追いかけてきたり、
何か言ってきたりはしないだろう。
わたしはちょうど来た
エレベーターに飛び乗り、青西建設を出た。
少しでも早く離れたかった。
好きってどういうコト⁈
ほんとに意味がわからない。
及川さんとのこの後の約束を
反故してしまったコトは
ちょっと気になるけど、それどころじゃない。
及川さんがわたしのコトを好きなんて…
ありえない。