第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「じゃあ、あまり好きではないんですね。」
「いや。
行ったコトないけど、キライじゃないよ。
眠れる森の美女とか好きだしね。
オレと行きたがる女のコたちは、
とりあえず、あの空間で
オレを連れて歩くコトのほうが
重要みたいだったから。」
「……。」
たしかに、及川さんを連れてたら
絵になるだろうけど…。
自分で言い切ってしまうところが、
及川さんらしい…(苦笑)
「檜原さんは?」
「え?」
「檜原さんはネズミーランド行く?」
「わたしは…今は行かないです。
学生の頃は友達とよく行ったけど…。」
「デートとかでも行ったんじゃないの?」
…やっぱりその質問は…するよね。
わたしは笑顔を作ってことばを続けた。
「いえ。…カシスオレンジと同じで、
ネズミーランドもわたしらしくないそうです。」
「ふーん。カシスオレンジと同じで、
男が見る目なかったんだね。」
「え…?」
「だって、絶対檜原さんらしいのにー。
なんたって眠り姫だし♪♪」
「な…何言って…?!あ…あの、そうだ‼︎
サンプル‼︎…サンプルお持ちしてるんです!
わたしもこれすごくいいと思います。」
わたしは慌てて話を仕事に切り替えた。
仕事の話をしている間に、
いい加減少しは落ち着かなきゃ…。
「ほんとだ。実物見るとやっぱり違うね。」
サンプルを見せると、
及川さんは一気に仕事モード。
やっぱり、仕事してる時の及川さんは、
普段以上にステキでドキドキしてしまう。
仕事中なのに…全然落ち着かない…。
「この間のとコレとで、最終検討しようかな。
この2つで上にあげるよ。」
「…‼︎ありがとうございます‼︎
でも、◻︎◻︎なんてよく思いつきましたね。」
「前にちょっと使ったコトがあって。」
「そうなんですね。
わたしはまったくその発想がなかったので、
ちょっと悔しいです。」
「悔しい?」
「はい。わたしから提案して、
及川さんに採用していただきたかったです。」
だって、それがわたしの仕事だし…
デザイナーの意味が…
「…っ⁈あはは…‼︎」
「え…?あの…」
なぜか及川さんは突然笑い始めた。
わたし、何も変なコト言ってないよね…