第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
『なーんだ、残念。じゃ、仕方ないから、
仕事の話しよーかなー。』
「仕方ないって…普通ですから…。
どうかされましたか?」
『あ、今度使う○○なんだけど、
◻︎◻︎はどうかな…って今思い浮かんだんだけど、
そういうサンプルってある?』
「あぁ!いいですね。サンプル、ありますよ。」
「ほんと?それ、今週中くらいに用意できる?」
「はい。今から手配すれば、明日の午後には。」
◻︎◻︎かぁ…思いつかなかったな。
さすが及川さん…目の付け所が違うし、
なんだかちょっと悔しい。
やっぱり仕事となると、
ガラッと印象変わるなぁ。
『さーっすがすみれちゃん♪助かるー♪』
「な…何言って…⁈」
自分は外にいるからってふざけすぎ‼︎
せっかく及川さんのコト見直してたのに‼︎
『えー?ほんとのコトじゃない♪』
「そ…そうじゃなくてですね⁈」
『あ、"すみれちゃん"て呼んだコト?
ごめんごめん♪この間の続きが出ちゃった♪
あ!もちろん今一人だし、仕事中は
ちゃんと"檜原さん"て呼ぶから安心してー♪』
ダメだ…及川さんに口でかなう気がしない…
『ね、それ、水曜日にウチに持ってこれる?
上司にも見せときたいんだ。』
「わかりました。何時頃お伺いします?」
『えっとねー、17時はどう?』
「はい。大丈夫です。」
17時アポなら、水曜日は直帰だなぁ。
『ね、その日、直帰でしょ?
帰りにそのままデートしようよ♪』
「えぇ⁈」
思わず大きい声を出してしまうと、
周りにいた人から注目を浴びてしまい、
わたしは慌てて、
手を左右に振ってごまかした。
『あはは♪そんな大きな声出して大丈夫?』
だ…誰のせいだと思って…‼︎
わたしが言い返せないのを
わかっているからか、
及川さんは電話の向こうで
楽しそうにケラケラ笑っていた。
「……サンプルは問題ありません。
水曜日の17時にお伺いします。」
なんとか立て直して、普通に答える。
『もちろんその後のデートも大丈夫だよね?』
「…⁈」
『楽しみにしてるね♡』
及川さんのそのことばで、
やっと電話が終わった。
ハァッ…
仕事中にこんなになってしまうなんて…
わたしらしくない。