第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
コーヒーを飲んで少し落ち着いてから、
映画館へ行った。
お金の貸し借りはしたくない‼︎って、
散々言ったのに、
及川さんはまた食事代を払ってしまったので、
お店を出る時にもう一悶着あったのだけど…。
タクシー代だけはどうにか
わたしが無理矢理払ったけど、
こんなコトで意固地になるなんて…
やっぱり可愛くないよね…。
でも、彼女でもないのに、
奢ってもらってばかりなんて申し訳ないし。
はぁ…及川さんはなんでこんなわたしに
付き合ってくれてるんだろ…
自分になびかないわたしに
意固地になっているだけ…?
それとも、一ノ瀬さんを忘れたくて…?
両方かもしれないけど、
後者のほうが大きい…のかな。
一ノ瀬さんを忘れるためには、
真逆なタイプのわたしはちょうどいいのかも…。
お互い失恋した者同士だし、
win-winでいいのかもしれない。
でも…わたしは…
「檜原さん、飲み物何にする?」
「…⁈」
色々考え込んでしまっていると、
チケットの引き換えを済ませた及川さんが、
わたしの元へ戻ってきた。
「眠い?なーんか考え込んでた?」
「え⁈い…いえ。」
「そう?なら、よかった♪飲み物何がいい?」
「…オレンジジュース。」
あの日から…お酒を飲んだあとは、
オレンジジュースを飲むようにしている。
酔ってボーっとした頭が、
及川さんに優しくされているみたいに、
スーッと軽くなるから。
「りょーかい♪」
「あ!お金…!」
「もーう!そんな数百円だし、
別会計めんどくさいし、いーの‼︎」
及川さんは急にしゃがみ込んで、
わたしに視線を合わせると、
そのままデコピンをしてきた。
「イタッ…」
「少しは及川さんにカッコつけさせてよ?ね?」
「…っ‼︎」
及川さんはそう言うと、
とても優しい目でわたしを見つめ、
デコピンしたトコを撫でてから、
飲み物を買いに行ってしまった。
十分カッコいいってば…
そんなコト…絶対言わないけど…。