第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
結局、及川さんおススメの
マルゲリータと、
ほかにもチーズオムレツやサラダを頼んだ。
この時間からピザやらオムレツなんて
多過ぎるかなと思ったのだけど、
席に並べられた焼きたてのピザもオムレツも
かなり小さいサイズで、
これならピザもオムレツも食べられそう。
「おままごとのご飯みたい。」
「おままごとする?」
ふいに出てしまったわたしのことばに、
及川さんがクスクス笑いながら、
ピザを切り分けてくれる。
「え⁈し…しませんっ‼︎
あ、すみません‼︎わたし、切ります‼︎」
「もう切れたから大丈夫♪
はい、どーぞ♪すみれちゃん♪」
「えっ⁈」
突然及川さんに下の名前で呼ばれて、
思わず反応してしまう。
「おままごと(笑)♪
"ママ"って及川さんが呼ぶのは
気持ち悪いかなって思って(笑)
すみれちゃんは子ども役かな♪」
及川さんは楽しそうに話しながら、
自分のお皿にもピザを載せた。
「…じゃあ、及川さんが"ママ"なんですか?」
「そこは"パパ"にしてよー。」
恥ずかしい気持ちを隠したくて、
素っ気なく言ったのに、
及川さんが本気で拗ねたようにこたえたので、
わたしは思わず笑ってしまった。
「ふふ…及川さんの方が子どもみたい。」
「…っ‼︎」
「…?及川さん…?」
あれ…?
笑ったから、気を悪くしたかな…
「檜原さんて…ズルい。」
「え⁈何がですか⁈」
「なーんでもない。さ、食べよ?」
「え⁈途中でやめないでください!」
「だーめ♪ナイショ♪」
「気になります‼︎」
「じゃあ、キスしてくれたら教えてあげる♪」
「…っ⁈」
とんでもないコトを言い出した及川さんは、
ニッコリ完璧なスマイルを崩さないまま、
ジッとわたしを見つめてきた。
「…してくれる♪?」
「し…しませんっ‼︎早く食べますよっ‼︎」
あ"〜っ‼︎もう‼︎心配して損したっ‼︎
こんなんじゃ、
心臓いくつあっても持たないっ…。
「美味しい?」
「…はい。」
何事もなかったように及川さんに聞かれたけど、
わたしは味もわからず、空返事をしていた。
黒尾くんを好きだった時も…
他の人を好きだった時も…
こんな気持ちになったコトないのに…