第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「少なくともその男どもは、
檜原さんが可愛くカシスオレンジ飲むトコを
見れなかったってコトでしょ?」
「…っ⁈あの、別に可愛く飲むわけじゃ…‼︎」
「オレはその男どもに感謝しなきゃだけど♪」
「え…?」
さっきから…
ううん…出会った時からずっとだ…
及川さんのことばはいつも予想がつかない。
「檜原さんを悩ませたのは良くないけどさ、
そのおかげでオレはカシスオレンジ頼むのに、
こーんなに可愛く迷っちゃう檜原さんを
見るコトができたし…」
「な…っ⁈」
「それに、もし見る目あるヤツがいたら、
檜原さん、その中の誰かと付き合ってたでしょ?
でも、そいつらが見る目なかったおかげで、
オレは今こうして檜原さんと二人きりで
お酒飲めてるわけだしね♪」
そう言うと及川さんは、
ジッとわたしの目を見てから、
傾けていたグラスをわたしのグラスに当てた。
「乾杯♪」
「…っ⁈」
どうしよう…
わたし…口説かれてるのかな…
そんな自分に都合良く考えてしまうくらい、
及川さんのことばはまっすぐで、
どんどんわたしの心に突き刺さってくる。
わたしは真っ赤になりすぎた顔を
誤魔化したくて、
久しぶりのカシスオレンジを味わわずに、
一口を多く含み、ゴクリと飲んだ。
「美味しい?」
「は…い。」
「よかった。」
及川さんは一言一言発するたびに、
わたしを優しく見つめてくる。
もう‼︎勘違いしちゃうからやめてほしいっ…
「あ…あの‼︎何か食べますか⁈」
及川さんの優しい視線に耐えきれず、
わたしは話をそらした。
「そうだね。あ、ココはね、ピザがおススメ〜♪
あの釜で焼いてくれるんだよ♪」
及川さんが指を差した先を見ると、
キッチンに大きな釜があるのが見える。
「ほら、あれ…」
「…っ⁈」
及川さんはわたしに顔を寄せて、
またあの釜を指差して教えてくれる。
見えてるってば‼︎わざとなの⁈
及川さんの優しい声が耳元で聞こえて、
釜どころではない。
「わ…わかりました‼︎
ピザ、どれにします?」
わたしが慌ててメニューを開くと、
及川さんは大袈裟に残念そうにして、
わたしの頭を撫でた。
や…やっぱり、わざとなんじゃないっ‼︎