第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
わたしのことばに及川さんは
ポカンとしてしまった。
やっぱり引いたかな…
何か言わなきゃと思った時に、
ちょうど店員さんが来たので、
及川さんがドリンクを注文してくれた。
もちろんわたしの分はカシスオレンジを…。
「で?何をそんなに迷ってたの?」
あ…引いたわけではない…のかな…
店員さんが行ってしまうと、
及川さんは、不思議そうにもう一度聞いてきた。
ちゃんと話さなきゃ…ダメだよね。
「……わたしのイメージじゃないって…」
「イメージ?」
「カシスオレンジみたいな可愛いドリンクは、
わたしのイメージじゃないって…
昔、言われたコトがあるんです。」
いつもは茶化してくる及川さんは、
ジッとわたしを見つめながら、
わたしの次のことばを待ってくれていた。
「お酒も強そうだし、
甘いカクテルはキライでしょ…って。
可愛らしいお酒頼むイメージないし、
似合わない…って。
それも、1人じゃなくて何人かに。
だから、頼みづらくて…。」
こんなコト…
今まで誰にも話したコトなかったのに、
なんでわたしはこんなにペラペラと
及川さんに話してしまうのだろう…。
「まぁ、お酒強くはないけど、
ビールとかワインとかも、少しずつなら
なんだかんだで飲めちゃうんですけどね。」
重い空気にしたくなくて、
最後はちょっと明るく言ったけど、
及川さんは黙ったままだったので、
わたしはことばを続けた。
「ごめんなさい。変な話しちゃって。
気にしないでくださいね。
ちょっと人に言われたからって、
わたしが気にしすぎなんです。」
「それって…元カレに言われたの?」
「え…?」
ずっと黙っていた及川さんの第一声は、
ちょっと予想外な質問だった。
ここまで話しておいて、
黙ってしまうのもおかしい。
「元カレっていうか…まぁ…その…
元カレにも言われたコトあるし…
その…何回かデートした人とか…です。」
恥ずかしかったけど、わたしは正直にこたえた。
「ふーん。」
…?
及川さんがちょっと拗ねたような反応をした時、
ちょうど飲み物が運ばれてきて、
及川さんはグラスをわたしに傾けると、
思いもよらなかったコトを言った。
「それってさ、今までの元カレやら男どもが
見る目なかったってコトじゃないの?」