第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
-すみれside-
何が起こっているのか、頭が追いつかない。
及川さんとの約束をドタキャンして残業して…
やっと仕事が終わって会社から出たら、
及川さんが待ってるとか…
ありえない。
でも、残業でクタクタの
わたしの手を引いているのは、
間違いなく及川さんなわけで…。
「ココでいい?」
「え⁈あ…はい。」
及川さんが連れてきてくれたお店は、
駅の反対側の小さなイタリアンのお店だった。
イタリアンのお店といっても、
敷居が高い…という感じはない。
かと言って、バーというには、
少しカジュアルな感じもする。
雰囲気の良いとても入りやすいお店だった。
カランカラン…
「2人、入れます?」
及川さんが声を掛けると、
お店の人が奥のカウンター席に通してくれた。
お店の中には、先客が2組いたけど、
適度な距離を保っていたから、
周りも気にならなかった。
「飲み物どうする?」
「ん〜…」
どうしよう…
飲みたいお酒はあるけど…
「ムリしてお酒飲まなくてもいいよ?」
メニューを見ながら迷っていると、
及川さんが横からパラパラとメニューをめくり、
ソフトドリンクのページを開いてくれた。
お酒は強くはないけど、
今日は仕事も大変だったし、
少しだけ飲みたい気分ではある…
でも…
「どうしたの?」
わたしがなかなか決められないでいると、
及川さんはまた優しく声を掛けてくれる。
「この間…わたし、寝ちゃったから…
お酒飲んだら迷惑かな…と…」
「な〜んだ。そんなコト?
寝ちゃったら、また及川さんちに
連れてってあげるから、大丈夫♪
安心してー♡」
「な…⁈行きませんっ‼︎もう寝ませんから‼︎」
「残念だなー。
じゃ、お酒飲めばいいじゃない?」
及川さんは、メニューを
お酒のページに戻してくれる。
「あの…なんでもいいんですか?」
「もちろん。あ、まさかボトル入れる⁈」
「いえ…」
及川さんになら…
正直に頼みたいもの頼んでも…大丈夫かな…
「なぁに?」
「あの…」
「高いヤツ?気にしなくていいよ?」
「いえ…その…」
悩み過ぎ…めんどくさいよね…
「…カシスオレンジ…」
「カシスオレンジ?」