第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
-及川side-
…っっ⁈⁈
"来てくれて、嬉しかったです"
少し恥ずかしそうに言う彼女を
思わず抱き締めたくなるのを、どうにか堪える。
彼女のことばは、
相変わらず鎧を纏っていたけれども、
少しは鎧が軽くなったのかな…
本当は、少しだけ不安だった。
行ったら嫌がるんじゃないか…って。
もしかして、もういないんじゃないか…って。
でも、オレの不安なんかより、
仕事を頑張っている彼女を
少しでも安心させてあげたかった。
気遣い屋さんの彼女は、
ドタキャンしてしまったコトを、
かなり気にしているはずだから。
それに何より、
オレが檜原さんに会いたかった。
会いたくて会いたくて仕方なかった。
「どういたしまして。
及川さんは王子様だから。
いつでも姫をお迎えにあがるからね!」
でも、空気が重くなりすぎないように、
ちょっとだけふざけた言い方をする。
「…っ⁈あ…あの‼︎その…姫とか‼︎」
「いーじゃない。可愛いし♡」
全部本心なんだけどなー。
「…⁈可愛くないです‼︎
そもそも、自分のコト王子とか…」
「えー?だって、
及川さん、めっちゃ王子様っぽいでしょ?」
「……っ‼︎」
あ…ちょっと認めたな?
ポンポン言い返していた
彼女のことばが止まる一瞬の間…。
「檜原さんて、すっなお〜♪」
「ちが…っ‼︎い…いい歳して、
自分のコト王子とか、よく言えますよねっ‼︎」
これくらいの鎧なら、
余裕で下ろしてあげられそうだ。
「でも、檜原さんだって眠り姫だし?」
「は…⁈」
「だって、まっつんのトコでも眠っちゃったし、
ウチで映画観たときも眠っちゃったし…
ね?眠り姫でしょー?」
「あ…あれは…‼︎」
「ねぇ、おなかすいてない?
眠り姫になっちゃう前にごはん食べに行こ♪」
照れる彼女をもっと見ていたいけど、
彼女が拗ねてしまう前に話をそらし、
彼女の返事を聞く前に彼女の手を取った。
「あの…手…⁈」
「こないだも手繋いだよ?」
「でも…‼︎」
「檜原さんに断る権利ないから♪」
檜原さんは戸惑ってはいたけど、
手を放そうとはしなかった。
オレはそれに気を良くして、
もっと強く彼女の手を握った。