第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「及川さん…?」
ガードレールに腰掛けて、
長い脚を組み替えながら、
わたしに笑顔で声を掛けてきたのは、
会えなくなったはずの及川さんだった。
「お疲れさま。仕事は無事終わった?」
「は…い…」
「それなら、よかった。頑張ったんだね。
檜原さん、最後だったんだ?」
「は…い…」
なん…で…?
なんでココに及川さんが…?
「残業に慣れてても、会社に最後、
一人になるのは、不安だよね。
ほんとよく頑張りました。」
及川さんはそう言うと、
ニッコリ笑顔で微笑んでくれた。
及川さんは怒るどころか、
優しい笑顔で、さっきから、
わたしの欲しいことばばかりをくれる。
「な…んで…?」
「ん?なぁに?」
「なんでココに…?
怒らない…んですか…?」
本当は一番に今日のコトを
謝らなければならないのに、
わたしがやっとの思いでしぼり出したことばは、
なんともそっけないものだった。
「檜原さんさ、
眠り姫が悪い魔女に眠らされたあと、
どうなるか知ってる?」
「え…?」
でも、及川さんは質問には答えてくれず、
代わりにトンチンカンな質問を返してきた。
わたしは、及川さんの突然のことばに、
また何も言えなくなってしまう。
「眠り姫が起きたときに
知ってる人が誰もいなかったら、
ひとりぼっちになっちゃう…って、
心配した優しい魔法使いが、
城中の人たちを眠らせちゃうんだよ。」
「…?」
それは…知ってるけど…
「だからね、檜原さんが仕事終わったとき、
みんなが帰っちゃってたら、
檜原さんがひとりぼっちになっちゃうから、
及川さんも仕事をするコトにしたんだ。」
「え…?」
「オレも仕事終わって、さっきココ着いたの。
檜原さん、最後だったけど、
オレがいるから、
ひとりぼっちじゃないでしょ?」
及川さんは何を言っているんだろ…
だって、わたし…ドタキャンしたのに…
あんな失礼なコトしたのに…
「ま、隣国の王子様は、
眠ってなかったんだけどさ。
そこは及川さんのオリジナルってコトで…」
「お…及川さん、バカなんですか⁈
わたし、あんな失礼なコトしたのに‼︎
なんでそこまで…⁈」
「別に失礼なコトじゃないでしょ?」
「え…?」