第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
「あずみにもあるよ♪
はい、あずみにお土産〜♪」
及川は1つの包みを一ノ瀬に手渡した。
「うわぁ♡
コレ、patisserieHYBAの新作じゃないですか‼︎
いただいていいんですか⁈」
「もちろん♪
"あずみにお土産"って言ったでしょ?」
「やったぁ。ありがとうございます‼︎
今日はめちゃくちゃ仕事頑張れそうです‼︎」
嬉しそうな一ノ瀬を
及川は愛おしそうに見つめていた。
でも、なんか前とは違うような…。
「ねぇ、あずみはさ…」
「なんですか?」
「"あずみにお土産"って言って渡したら、
あずみのものだと思うよね?」
「うーん…そうですね。
わたしの…だと思いますけど…」
「はぁ…そうだよね。」
「でも、食べる時に誰かいたら、
おすそ分けはするかもしれないかなぁ。
あ、でも、コレは一人で食べたいかも…
って、コレ、本当は、
わたしのじゃなかったんですか⁈」
及川の意味不明な質問に、
一ノ瀬はハッとしたように
受け取った紙袋を及川に押し返した。
「あはは♪ごめん、ごめん♪
あずみの喜び方が正解だよ。
ちゃんとあずみのだから、心配しないで。」
「……?」
「じゃ、オレ行くね。
どっかのあずみの彼氏の後任さん、
容赦ないから、宿題多くて忙しいんだよね。」
及川はそう言うと、
キョトンとしている一ノ瀬に、
もう一度紙袋を手渡して、
自分のデスクに戻ってしまった。
「及川さん…何かあったんですか?」
「さぁ?忙しいだけじゃねーの?」
ま…"なんかあった"…んだろうな…。