第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
-花巻side-
「マッキー!」
デスクで明日の会議資料をまとめていると、
クソ川が駆け寄ってきた。
「…。」
でも、クソ川に構っている暇はないので、
顔はあげない。
「マッキーってば‼︎」
「なんだよ?オレ、忙しいんだよ。」
もちろんまだ顔はあげない。
及川は無視して、仕事を続けた。
「もう‼︎
無視するなら、お土産あげないからー‼︎」
カサッ…
紙袋の角がオレの鼻先に触れ、
チクリと痛くて、
せっかく及川を無視していたのに、
思わず顔を上げてしまう。
「なんだよ?痛ぇなっ‼︎」
「せーっかく買ってきたのになぁ。
マッキー、いらないんだ〜?」
オレの鼻先に触れた紙袋は、
patisserieHYBAの紙袋だった。
「…何買ったんだよ?」
シュークリーム⁈
シュークリームなのか⁈
いや、でも、シュークリームは、
前に一ノ瀬が買ってきたから食ったコトあるし…
「今日発売の限定のやつ〜♪」
「はっ⁈マジかよ⁈」
及川が袋から取り出したのは、
たしかに先日HPで見た
patisserieHYBAの新作の焼き菓子。
やっべぇ…超食いたいっ‼︎
でも、こいつに頭下げんのはシャクだな…
「今日、NEKOMAで打ち合わせだったから、
せーっかくマッキーとあずみにも
ついでに買ってきてあげたのになー。」
及川はフンフフーン♪と
得意げに鼻歌を歌っているが、
オレは及川のあることばが引っかかった。
「"ついで"って?」
「何が?」
「オレと一ノ瀬が"ついで"なら、
おまえは誰のために
patisserieHYBAに行ったんだよ?」
「…‼︎別に〜?
今日はNEKOMAで打ち合わせだったからさ。
"NEKOMAに行った"ついでに、
マッキーたちに買ってきてあげたんだよ?」
及川は一瞬ハッとしたような表情を見せたけど、
それは、ほんとにほんの一瞬で、
すぐにいつもの及川に戻っていた。
「へぇ…。」
「あー!二人して何サボってるんですか?」
打ち合わせから戻ってきた一ノ瀬が、
オレの机を覗き込んできたので、
オレは及川をそれ以上深追いするのをやめた。