第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
映画の公開日まであと2週間となった月曜日。
ここ最近、毎週月曜日の11時からは、
及川さんとの打ち合わせが入っていた。
今日はウチの会社で打ち合わせだったので、
11時までは、
元々担当していたプロジェクトの仕事を
片付けようと思っていたのだけど、
及川さんが来る日は正直落ち着かない。
ソワソワした気持ちを落ち着かせたくて、
一回席を立とうとすると、
黒尾くんに話し掛けられた。
「檜原さん、今いいっすか?」
「あ、うん!何?」
「これなんですけど…
この場合、これ…どう思います?」
「どれ?」
黒尾くんが持っていたタブレットを覗き込む。
「う〜ん…そうだね‼︎
これなら、コスト的にもいいと思うよ。
でも、あとは部長判断かなぁ。」
「ですよね‼︎
すげぇ心配だったから、
檜原さんの後押し欲しかったんです♪」
「え〜?わたし、責任持たないわよ?」
「いやいや!檜原さんも賛成してくれたって
いう事実が大事なんです♪」
「あのねぇ…」
でも、黒尾くんの資料はよくまとまってるし、
問題ないと思うんだけどな。
黒尾くんも成長したなぁ。
「…!檜原さん、及川さん来てますよ?」
「え⁈」
黒尾くんの成長をしみじみ感じていると、
まさかの黒尾くんのことば…。
ウチの会社は社長のこだわりで、
1階はすべてガラス張りで、
社長がデザインした事務所の中が
見えるようになっている。
つまり、中からも外が見えるので、
道路の反対側にいる及川さんが見えた。
「まだ10時半なのに…」
わたしたちの視線に気付いたのか、
及川さんは安定の営業スマイル?で、
手を振りながら、入り口へ向かっていったので、
わたしは慌てて及川さんを出迎えた。
「すみません。ちょっと早く着いちゃって。」
仕事中…というか、2人きりじゃない時は、
及川さんは、きちんと敬語を使ってくる。
そんな使い分けができるくらい、
及川さんはいつも余裕がある。
わたしも及川さんに負けじと
営業スマイルで返し、
及川さんを会議室に案内した。
「いえ。大丈夫ですよ。
すみません。資料取ってきますね。」