第46章 -運命-(及川徹)[完結編]
-すみれside-
”公開日、◯日だったよ♡
金曜日だったー!◯日空いてる?
てゆーか、空けといてね♡”
及川さんからきたLI◯Eを
すぐ既読にしてしまったのは、
わたしも今映画の公開日を調べていたから。
公開日は3週間後の金曜日だった。
何も予定はなかったはずだけど、
急いで手帳をチェックして、
”わかりました”とだけ短く返事をする。
及川さんちでたこ焼きパーティーをしてから、
及川さんとは、ほぼ毎日、
なんらかのLI◯Eのやりとりをしていた。
それだけじゃなくて、
仕事のやりとりもしているし、
仕事で週1回は及川さんに会っている。
仕事と、残り3回のデートがあるせいで、
いつのまにかわたしの生活の一部に
及川さんがどんどん侵食している。
だから、毎日毎日、
及川さんのことを考えてしまう。
及川さんのコトを好きだからではなく、
今は、なぜか及川さんとの関わりが多いから。
及川さんとのプロジェクトが終わって、
及川さんの言う、残りのデートが終われば、
わたしたちはなんの関係もなくなる。
そうすれば、及川さんのコトなんて、
思い出すコトもなくなるだろう。
及川さんとの仕事のせい。
及川さんとのデートの約束のせい。
及川さんとの毎日のLIN○のせい。
及川さんのことを考えてしまう
自分の気持ちを打ち消すことばは、
山ほど出てくる。
だから、大丈夫。
そもそも、及川さんのタイプは、
わたしみたいな可愛げのない女ではなく、
一ノ瀬さんみたいなニッコリ笑顔の愛らしい
可愛らしい女なんだから。
あの優しい笑顔も、
ちょっと意地悪な顔も、
意外と子どもっぽいところも、
誰も気付かないようなさりげない気遣いも、
あの暖かい手の温もりも…
わたしにだけじゃない。
こんな可愛げのないわたしなんかに
優しくするわけがない。
勘違いしちゃダメ…。
そもそも、失恋したばっかりなのに、
誰かを好きになるなんて、
キュッと胸が締め付けられる
苦しい想いなんて……
もうしたくない。
大丈夫。
気持ちに蓋をするなんて…簡単だもの。