第45章 -運命-(及川徹)[後編]
道もわかるし、大丈夫だから…と断ったのに、
結局、駅まで及川さんに送ってもらった。
「楽しかったな〜♪檜原さんも楽しかった?」
「…はい。」
帰りは手を繋がないように…
と思っていたのに、荷物のない帰り道は、
及川さんちを出た瞬間に手を握られてしまい、
わたしは及川さんを見るコトができない。
”4回デートして♪”
貸し借りはイヤと言ったわたしに
及川さんはそう言ったけど、
デートするからってなんで手まで…
そう思うのに、
及川さんの手をはなしたくない…
そう思う気持ちが
行く時よりも大きくなっているコトに
わたしはまた気付かないふりをした。
「あれ?素直だ☆嬉しいなー♪」
「な…っ⁈別に…‼︎
ひろみさん達がいたから…っ‼︎」
ほんと…可愛くないなぁ…
一ノ瀬さんなら、こういう時、
もっと素直に可愛く気持ちを言えるのかな…
「しょうがないなぁ。
そういうコトにしといてあげるよ♪」
及川さんは楽しそうにことばを続けた。
「あのたこ焼き器さ〜、
マッキーの結婚式の二次会のビンゴで
当たったんだけど、全然使ってなくてさ。」
「マッキー?」
及川さんて、人にすぐあだ名付けるなぁ…
岩ちゃんにまっつんに…マッキーって。
「同期なんだけど…花巻って知らない?
夜久さんとよく仕事してるみたいだけど…」
「夜久くんと…?…‼︎」
それって…たしか、一ノ瀬さんの上司の…?
「今はあずみの上司なんだけどね。」
「……及川さんて…一ノ瀬さんの名前出すの…
平気なんですね。」
「なんで?
檜原さんも黒尾くんの名前出すじゃない?」
「わたしは…‼︎黒尾くんはただの後輩だし…
それに、黒尾くんの名前出してくるのは、
及川さんです!」
及川さんは事あるごとに
黒尾くんのコトを聞いてくるけど…。
「オレも同じだけど?
あずみは元部下だしね。」
でも…ずっと、”あずみ”って呼んでる…。
気になるけど…そんなコト、
わたしがとやかく言える立場じゃないし…
「黒尾くんのコト、吹っ切れた?」
「…っ⁈吹っ切るも何も、
そんなすごく好きだったとかじゃ…」
及川さんのことばに
いちいちドギマギしてしまう。