第45章 -運命-(及川徹)[後編]
「…そうなんだぁ。」
自分から聞いてきたのに、
及川さんはさほど興味がないように
呟くと、そのまま黙ってしまった。
「及川さんは……」
「なぁに?」
「な…なんでもないです‼︎」
「えー?気になるなぁ。」
「も…もう、駅なので‼︎
ありがとうございましたっ‼︎」
朝、わたしを出迎えてくれた改札の前で、
わたしは及川さんの手をはなした。
「…。あ!そーだ!これ…」
「…?」
及川さんは小さい紙袋を渡してくれた。
「さっきのDVD。
檜原さん、最後まで見てないでしょ?」
「…いいんですか?」
「もちろん。次のデートまでに
ちゃーんと見といてね?」
「あっ…えっと…は…い。」
及川さんの”デート”ということばだけで、
ドキッとしてしまい、
及川さんの目を見るコトができない。
「次のデートも楽しみだなぁ。
映画の公開日調べとかないとね♪」
「公開日はたぶん平日じゃ…」
「じゃあ、予定合えば、
レイトショーとかでもいいかな。
遅くなっちゃったら、ウチに泊まればいーし☆」
「泊まりませんっ‼︎」
なんですぐ”泊まる”とか言えちゃうの⁈
及川さんてほんとにわからない…
でも、また及川さんに会えると思うと、
嬉しくてドキドキしてくる。
「でもさ…」
及川さんは突然わたしに視線を合わせて、
わたしの耳元に顔を寄せた。
「残りのデートではさ、
”あぁっ‼︎及川さんとのデートは最高だった♡”
って思えるようにしてあげるね。」
「…っ⁈」
「じゃあ、気をつけて帰ってね。」
「あ…ありがとうございました。」
及川さんは、わたしが階段を登りきるまで、
ずっと改札の前で手を振ってくれていた。
”及川さんは一ノ瀬さんのコト、
吹っ切れたんですか?”
ほんとは、
及川さんにそう聞きたかったけど、
聞けなかった。
及川さんが一ノ瀬さんのコトが
まだ好きだというコトは、
聞かなくてもわかっていたから。
一ノ瀬さんのコトがまだ好きなのに…
これ以上、ドキドキさせるコト…
言わないで…
---End---
→to be continued
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