第45章 -運命-(及川徹)[後編]
「うん。しっかり汚れも落ちてるし、
ちゃんと乾いてるね。
あとは、アイロンだけか。」
及川さんは洗濯機から取り出した
わたしのシャツを触って確かめながら、
アイロンを取りに行くためか、
スタスタとバスルームを出てしまった。
「大丈夫です!
ここまでしていただいたら、十分です。」
何から何まで申し訳なさすぎる‼︎
わたしは及川さんを追いかけて、
及川さんの手から自分のシャツを取った。
「でも、オレのもちょうど
アイロンしようと思ってたからさ。」
「わ…わたしのはいいです‼︎」
「じゃ、シャツ洗ったお礼に
オレのも一緒にアイロンかけてよ?
それなら、いーでしょ?」
「え…?」
及川さんのとんでもない提案…
お礼に…と言われてしまうと、
断りにくい…。
「ね?いーでしょ?」
「…っ⁈」
及川さんはまたグッと顔を近づけてきて、
甘えるように耳元で囁いてきた。
「わ…わかりましたっ‼︎
もう‼︎早く貸してくださいっ!」
結局、及川さんのワイシャツ2枚と、
自分のシャツにアイロンをかけて、
わたしはやっと自分のシャツに
着替えるコトができた。
「ありがとう。
檜原さん、アイロン上手だね。」
「アイロンに上手い下手ってあるんですか?」
及川さんが満足してくれたなら、
それはそれでよかったけど、
いちいち褒められるとほんとに恥ずかしくて、
わたしはまたそっけなく答えてしまった。
「あるんじゃない?
オレ、ボタンの周り苦手なんだよね〜。
だから、助かったよ。ありがとう。」
「…っ⁈」
及川さんはまたお礼を言ってくれた。
迷惑掛けたのはわたしなのに…。
及川さんは、
シャツを洗ってくれたのも、
アイロンしてくれたのも、
全部わたしが気にしないように
言ってくれる。
ほんとに…優しすぎる。
「いえ…あ…そろそろ帰ります。
遅くまでお邪魔しちゃって、
ほんとにすみません。」
「帰っちゃうの?
今日も泊まってけば〜?」
「…っ⁈泊まりません!」
「え〜?
今日は添い寝してほしかったのになぁ。」
「す…するわけないじゃないですか‼︎
ヘンタイっ‼︎」
前言撤回‼︎
及川さんは、優しいけど、
やっぱりただのヘンタイだ。