第45章 -運命-(及川徹)[後編]
-すみれside-
あったかくて…
何かに守られているみたいで…
自分が纏っている鎧を
誰かに下ろされるような…
そして、そのまま、
優しい王子様のキスで目覚め……??
「…っ⁈きゃあっ‼︎」
パッと目を開けると、
目の前に及川さんの顔があった。
「”きゃあ”って、ひどいなぁ。」
「お…及川さんっ⁈あの…なん…で⁈
え…?何…して…⁈」
ソファに座ってはいるけど、
及川さんはわたしに覆いかぶさるように、
わたしの髪をクルクルして遊んでいる。
「映画終わっちゃったよ?」
「え…?」
そうだ…わたし…
シャツを洗ってもらってる間に、
及川さんと映画見てたんだ…
って、え⁈
終わっちゃったって…わたし…
「檜原さん、途中でオレに抱きついて
眠っちゃうんだもん♡」
「だ…抱きついてな…⁈」
及川さんに言われてハッとする。
わたしの身体は及川さんのほうを向いていて
及川さんに抱きついていた。
「きゃあっ‼︎…ごめん…なさい…」
慌てて及川さんから離れると、
今度は自分に掛けられていたものが、
及川さんがさっき着ていた
上着だというコトに気付いた。
「あ…あの…コレも…」
「及川さんずくしだったね☆」
「…っ⁈」
たしかに、わたしは、
及川さんのシャツを着て、
及川さんの上着を掛けてもらって
及川さんに抱きついて眠っていた。
「へ…変な言い方しないでくださいっ‼︎
起こしてくれればよかったのに…」
悪いのは眠ってしまったわたしなのに、
また及川さんにキツく文句を言ってしまう。
失礼すぎる…頭ではわかっているのに、
及川さんに対しては自分の感情を
どうしてもコントロールできなかった。
「気持ち良さそうに眠ってたから、
起こすの悪いなって思ったんだよね。
寝顔も可愛かったし。」
「…っ⁈」
及川さんはそう言うと、
わたしの頬を優しく撫でた。
「眠り姫みたいだったよ。」
「…っ⁈そ…そういうコト、
言わないでくださいっ‼︎」
なんでこの人は、
姫とか簡単に口にできるんだろ…
「可愛いのになぁ。
あ、そろそろ乾燥終わったかもよ?」
及川さんは、わたしの頭をポンとすると、
わたしの手を引いて、
一緒にバスルームへ向かった。