第45章 -運命-(及川徹)[後編]
オレの隣に引き寄せただけで、
あたふたしていた彼女は、
あっという間に映画の世界に惹き込まれ、
真剣に映画に見入っていた。
オレの隣でリラックスしてくれてるなら、
それはそれで嬉しいけど、
やっぱりちょっと面白くない。
…♪
オレは、ソファの背もたれに置いていた腕を、
そのまま下に下ろし、背もたれではなく、
檜原さんの肩に腕を置くコトにした。
「…っ⁈」
檜原さんはビクッとして、
オレのほうを見上げていたけど、
映画を見てる最中だからか、何も言わない。
オレはそれをいいコトに、
映画に集中しているふりをして、
彼女の肩を抱いていた。
もっともっとオレのコトを考えていてほしい。
オレのコトを意識していてほしい。
オレはテレビをジッと見つめながら、
気がついたらまた
檜原さんのコトを考えていた。
なんで、檜原さんがこんなに気になるのだろう?
あずみのコトはほんとに好きだった。
でも、こんなにあずみのコトを
考えていたコトはなかったし、
休みの日に会いたいと思ったコトもない。
檜原さんは…
…コテン。
え…?
「檜原さん…?」
肩に重みを感じて、檜原さんへ目をやると、
彼女はスゥスゥと気持ち良さそうに眠っていた。
「これじゃ春人くんと同じじゃないか…」
彼女の無防備な寝顔を見るのは、これで二度目。
手を伸ばして、ソファに掛けてあった
オレの上着を彼女に掛けてあげる。
「んん…」
上着を掛けてあったかくなったからか、
彼女は少しだけ動いて、
オレの腰にギュッと抱きついてきた。
「…っ⁈眠ってるからって…それは反則だよ…」
はぁ…とりあえず、これが終わるまでは、
我慢してあげよっかな…
ほんと…眠ってる時だけは、
小さな子どもみたいで…
お姫さまみたいなんだけどなぁ…
まさに眠り姫だな。
オレは小さくため息をついてから、
変な気を起こさないように、
もう一度テレビに集中するコトにした。