第45章 -運命-(及川徹)[後編]
「それも可愛いよ?
最近、女のコのシャツもちょっと大きめだし、
服が乾くまでなんだから、いーじゃない♪」
オレが彼女に渡したのは、
この間着た淡い水色のストライプのシャツ。
白シャツにしなかったんだから、
褒めてほしいくらいなのにー。
さっきのエプロンが大きかったのも、
可愛かったのだけど、
”彼シャツ”姿の檜原さんは、さらに可愛かった。
普段の彼女とのギャップもあるかもしれない。
真面目な檜原さんの隙のある姿に、
ドキッとしてしまう。
「そういう問題じゃな…」
「あ!ほら、早くシミ抜きしよ‼︎」
オレは彼女のことばを遮り、
ちょっと強引にバスルームへ入り、
シミ抜き用の洗剤を取り出した。
「あ…‼︎じ…自分でやります‼︎」
抗議を諦めた彼女は、
慌ててシャツを洗い始めた。
ほんと…コロコロ変わるなぁ。
「どう?落ちた?」
「…っ⁈は…い…」
彼女の横から覗き込むと、
シャツのシミはキレイになくなっていたけど、
俯いて返事をした鏡に映る彼女の顔は
やっぱり赤くなっている。
「じゃ、洗おっか。
乾燥まですると3時間くらいかなぁ。」
「そんなに⁈」
彼女がまた何か言いださないうちに、
シャツを洗濯機に入れてスイッチを押す。
彼女は目を見開いてオレを見上げていた。
たぶん、時間が長すぎて迷惑に…とか、
余計なコトを考えているのだろう。
「なんか映画でも見る?
そしたら、あっとゆーまだよ♪」
彼女の手を引いて、リビングに戻り、
DVDが入っている棚を開く。
「好きなの選んでいーよ。」
「あ…片付け…すみません!
結局、全部やっていただいちゃって…」
ほんとによく気がつくなぁ。
彼女はDVDよりも先に
部屋の様子に気付いたらしい。
たしかに片付けはしたけど、
彼女だってお客さんなんだから、
気にしなくていいのに。
「気にしなくていーよ。DVD選んでて?」
彼女が選んでいる間に、
オレはコーヒーを入れて、
キッチンから彼女の後ろ姿を見つめた。
ほんとに…なんで…
こんなに彼女が気になるのだろう。