第45章 -運命-(及川徹)[後編]
-及川side-
「あの…ほんとにすみません…」
岩ちゃんたちが帰って、
彼女に代わりの服を渡すと、
彼女は俯いてオレに謝った。
「別にいいってば。」
「でも…」
「ほんとに気にしてないから。
ほら、早く脱いでシミ抜きしよ?」
「この間から迷惑掛けてばかりで…」
ほんとに気にしぃだな…。
まぁ、取引先の人間相手だったら…
そんなもんか。
黒尾くんに対しても…
こんなに色々気にするのだろうか?
なんでだろう?
檜原さんのコトを考えると、
いちいち黒尾くんが頭にチラついてしまう。
「ほんとにほんとに気にしてないよ?」
何度も何度もしっかりことばにしたら、
オレがほんとに気にしてないコトが、
彼女に伝わるかもしれないと思って、
彼女の目を見てゆっくり言うと、
ほんの少しだけ彼女の瞳が揺れた。
「ほんとに気にしてないからさ?
それより、早く脱がないなら、
ほんとにオレが脱がしちゃうよ♡?」
「なっ⁈」
「及川さんに脱がされ待ちだったなら、
それこそ早く言ってくれればいーのに♡」
「脱がされ待ちとか、
あるわけないじゃないですか‼︎
自分で脱ぐから、外で待っててくださいっ‼︎」
オレが茶化すと、
彼女はやっといつもの調子を取り戻し、
真っ赤になりながら、
オレをドアの外へ追い出した。
世話が焼けるお姫さまだなぁ…。
「お…及川さんっ‼︎」
彼女を待っている間に片付けをしていると、
この間のデジャブかのように、
またバスルームから、彼女に呼ばれた。
やっぱり♪♪
「なぁに〜?」
バスルームへ行くと、
またドアを少しだけ開けて、
檜原さんがちょこっと顔を出していた。
「あ…あのっ‼︎この服…っ…」
「ダメ?今日はデニム履いてるから、
下は大丈夫でしょ?」
ニッコリして言うと、
彼女は真っ赤になってしまう。
「でも…あの…」
彼女に貸した服はオレのワイシャツ。
デニムを履いてても、オレの服が、
オーバーサイズなコトに変わりはなく…
「”彼シャツ”みたいで可愛くない?」
「だから、イヤなんですっ‼︎」
だと思ったけどさ〜。
春人くんとばっかり仲良かったから、
ちょっと意地悪したくなっちゃったんだよね〜。
とは、言わないけど☆