第45章 -運命-(及川徹)[後編]
及川さんに囁かれるたびに、
心の奥までくすぐったい。
「ふふ…やっぱり可愛いなぁ。」
「…っ⁈」
すぐになんでも”可愛い”という及川さんは、
ほんとに女のコみたいだ。
でも、及川さんの言う”女のコ”は、
一ノ瀬さんみたいな女のコであって、
わたしみたいなひねくれた女じゃない。
「…可愛くないです。」
「可愛いのにー。
じゃあ、このスプーン持ってってくれる?
あ!あと、さっきのラムネとお煎餅、
春人くんに選んでもらおうか。
選ばれなかった人が、
選ばれた人の言うコトをひとつきくコト♪」
「…っ⁈そんなコトしません‼︎」
わたしは及川さんのことばを否定して、
スプーンとお菓子を持って、席に戻った。
「ねぇねぇ、春人くん!」
「なぁに?すーちゃん!」
「春人くん、どっちが好き?」
春人くんの目の前に
ラムネとお煎餅を持っていくと、
春人くんは真剣に二つを見つめていた。
「うーん…」
「春人くん、甘いの好きだよね〜?」
春人くんが悩んでいると、
アイスクリームを持ってきてくれた及川さんが
余計な入れ知恵をしようとする。
「及川さんっ‼︎」
「うーん…お煎餅っ!」
「やった‼︎」
「えーー⁈」
「…オマエら、何やってんだよ?」
一連の流れを見ていた岩泉さんが、
呆れたように呟いた。
「オレはラムネがオススメで〜
檜原さんはお煎餅がオススメで〜
春人くんはどっちが好きか
選んでもらおうと思ってさ〜♪
これも開けよっか。」
「どっちも食べたーい!」
「春人!アイスクリーム食べるんだから、
どっちもなんて、食べ過ぎよ?
虫歯できちゃうでしょ?」
春人くんが食べたいと言えば、
なんでも開けてあげようとしてしまう
わたしと及川さんに反して、
ひろみさんは、ビシッと一言。
さすがだなぁ。
「じゃあ、ひろちゃん、コレ持って帰って。
春人くんのおウチのおやつにしなよ?」
「徹くん、いいの?すみれちゃんも…」
「はい。」
「もちろん。春人くんのために買ったんだし。
じゃあ、アイスクリーム食べよっか。
春人くん、何味にする〜?」
春人くんはアイスクリームも真剣に選んでいて、
大人はそんな春人くんに癒されてから、
皆でアイスクリームを食べた。