第45章 -運命-(及川徹)[後編]
-すみれside-
「春人くん、こっちに座ろうか?
たこ焼き器から離れた席の方がいいよね。」
及川さんはたこ焼き器から一番遠い
お誕生日席に春人くんを連れていった。
及川さんて…小さいコのコトまで、
ちゃんと気に掛けてるんだ…。
「ココ〜?」
「そう。熱いから危ないでしょ?」
及川さんは春人くんのために
クッションも用意して、
座りやすくセッティングしてから、
春人くんを抱き上げ、クッションに座らせた。
「特等席だからね☆」
思いの外、子どもの扱いが上手くて、
及川さんの意外な一面に
またドキドキしてきてしまう。
「徹くん、何かお皿貸してくれる?
ポテトサラダとだし巻き卵作ってきたの。」
「ポテトサラダとだし巻き卵⁈あっ…」
ひろみさんのことばに
恥ずかしくも先に反応したのは、
及川さんではなくわたしだった。
「ふふ…すみれちゃん、両方とも好きでしょ?
たこ焼きだから、何か軽く…と思って、
この二つにしちゃった♪」
お通しで出てくるには贅沢な
”岩泉”のポテトサラダと、
定番メニューのだし巻き卵は、
わたしの大好きなメニュー。
ひろみさんがわたしが好きなものを
覚えていてくれて嬉しい。
「ありがとうございます。」
「お皿、ちょっと待ってね。」
及川さんがキッチンへ行き、
わたしたちは春人くんの待つテーブルへ行った。
春人くんがお誕生日席で、
春人くんから見て左右の一番近い席に
ひろみさんと岩泉さんが座ったので、
わたしはひろみさんの隣に座ることにした。
「お待たせ。ひろちゃん、ありがとね。」
「いーえ♪」
及川さんは岩泉さんの隣に座り、
さぁ、やっとたこ焼きを焼こう…という時に、
突然春人くんが口を開いた。
「ねぇ、ボク、すーちゃんのお隣がいい!」
「…っ⁈」
「え?わたし?」
「春人〜!ワガママ言うな!」
「こっちは火を使うから危ないって、
さっき徹くんも言ってたでしょ?」
岩泉さんとひろみさんが
春人くんをたしなめるけど、
春人くんは納得しない。
「今日初めてすーちゃんと会えたんだもん。
もっとお話したいもん。」
「…っ‼︎春人くん、ありがとね。」
春人くんは…天使だ♡