第45章 -運命-(及川徹)[後編]
「もぉ…しょうがないなぁ。
じゃあ、ママの席にすーちゃんに来てもらう?
それならいい?お隣でしょ?」
「うんっ‼︎」
「すみれちゃん、ごめんね。
わたしと代わってもらってもいい?」
「はい。」
ひろみさんの妥協案に春人くんが納得し、
一件落着かと思い、
わたしとひろみさんが席を代わると
そこで何故か待ったを掛けたのは、
及川さんだった。
「えー⁉︎
じゃあ、オレも檜原さんの隣がいー!」
「は⁈ちょっ…何言って…⁉︎」
わたしがポカンとしてしまうと、
すかさず岩泉さんが及川さんを牽制する。
「あん⁈
クソ川、おめぇ話ややこしくすんじゃねーよ‼︎」
「だってー‼︎こーんな怖い岩ちゃんの隣じゃ、
せっかくのたこ焼きが不味くなっちゃうー!」
「それはこっちの台詞だっつーの‼︎」
「あの…二人とも…春人くんもいるので…」
及川さんを牽制したはずの岩泉さんまで
ヒートアップしてしまい、
まったくもって収拾がつかない。
「……。もう‼︎徹くん、うるさい‼︎」
「え⁈岩ちゃんも怒鳴ってたよー‼︎」
「はぁ…じゃあ、
わたしと徹くんが代わればいいでしょ?」
「ひろちゃ〜ん♡ありがとーう♡」
「まったく相変わらずガキだな!」
ひろみさんの一言でやっとおさまり、
結局わたしの隣に及川さんが来た。
それだけなのに、
なんだか急にドキッとしてしまう。
「じゃあ、始めよーか!」
「その手がウザい!」
及川さんがなぜか両手を広げて
声を掛けると、
また岩泉さんがツッコミを入れる。
「岩ちゃん、ヒドイ!」
どうにかこうにかたこ焼きを作り始めると、
やっぱり、料理人だからなのか、
岩泉さんはたこ焼きの素を
流し込むところから丁寧で、
あっという間に具財も入れて、
器用にクルクル回している。
「すごーい‼︎岩泉さん、うまいですね!」
「そっか?」
「はい!たこ焼きを家でやって
こんなにキレイにできるの、初めてです!」
「ウチでもたこ焼きはハジメの担当だもんね♪」
「パパ、じょーず!」
「でも、岩ちゃん!焦げてるのあるよ〜?」
ほとんど岩泉さんがやってくれているのに、
及川さんは一人揚げ足を取る。
「あん⁈そりゃ全部オマエ用だよっ!」