第45章 -運命-(及川徹)[後編]
檜原さんが春人くんを連れて行くと、
後から靴を脱いだひろちゃんが、
またオレをジッと見ていた。
「なぁに?
ひろちゃん、オレに惚れちゃった?
岩ちゃんに内緒で今度デートしちゃう☆?」
「ク〜ソ〜か〜わ〜っ‼︎」
「冗談だってば、岩ちゃん‼︎
ほんと岩ちゃんて冗談通じないんだから〜。
相変わらず頭固いなぁ…」
「ねぇ、徹くん…」
ひろちゃんの視線に気付かなかったふりをして
岩ちゃんをからかいながら、
リビングに戻ろうとしたのに、
ひろちゃんは気付かないふりを
させてくれなかった。
「なぁに?」
「徹くんて…今彼女いないんだっけ?」
「何?唐突に…」
「別に。
最近どうなのかな〜って思っただけ。」
「相変わらずモテモテだよ☆
岩ちゃんと違ってモテる男は大変なんだよ〜?」
「あん⁈おめぇ、いちいちうっせぇよ‼︎」
岩ちゃんは乱暴なことばとともに、
回し蹴りまでオレにプレゼントしてくれる。
「いったーい‼︎
もう‼︎岩ちゃん、僻みはよくないよ‼︎」
「僻んでねーよ‼︎」
「ハジメ…モテたいの?」
「「…っ⁈」」
オレまでビクッとしてしまうくらい、
ひろちゃんの声が凍っている。
「バッ…‼︎ちげぇよっ‼︎」
「ふ〜ん。」
どうやら、ひろちゃんは、
岩ちゃんの返事がお気に召さないらしい。
「お…おいっ‼︎あのな〜っ‼︎
オレはおまえが居ればいいんだよっ‼︎」
「ハジメッ‼︎よかった〜♡」
焦った岩ちゃんのことばにひろちゃんは、
嬉しそうに岩ちゃんに抱きついた。
「てゆぅか、人んちの玄関で
イチャイチャしないでくれる〜?」
「イチャイチャしてねぇよ‼︎」
「それくらいいーじゃない!ケチ〜‼︎」
「あのね〜⁈ケチとかじゃなくて‼︎」
うぅ…相変らずひろちゃんにはかなわない…。
「徹くんは最近誰かとイチャイチャした?」
「ひろちゃん、さっきからどうしたの?」
「徹くんの好きなコって…」
「ママ〜‼︎手洗ったよ〜‼︎」
春人くんがひろちゃんの元へきて、
その話はそこで終わった。
檜原さんと過ごした時間は、
イチャイチャに入るのだろうか…?
オレはリビングに向かいながら、
また檜原さんのコトを考えていた。