第45章 -運命-(及川徹)[後編]
「こんにちはっ!いわいずみはるとですっ!」
「はじめましてだね〜。檜原すみれです。
よろしくね、春人くん!」
玄関から聞こえてくる会話で、
檜原さんが、春人くんに会うのは
初めてだったんだというコトを知る。
「いらっしゃ〜い。…っ⁈」
「春人くん、かわいーい♡」
玄関まで行くと、檜原さんは、
今までに見たコトのない優しい表情で、
春人くんを抱き締めていた。
「すーちゃん、痛いよ〜」
「春人、照れてる〜♡」
「よかったな、春人(笑)」
岩ちゃんとひろちゃんは笑ってるけど、
二人とも親ならちゃんと止めてよ‼︎
なんだか心がほんのちょっとモヤッとする。
「いつまでも玄関にいないで、あがったら?」
「…っ‼︎あ、ごめんなさい。
わたし、勝手に玄関開けちゃって…」
檜原さんは慌てて春人くんから離れた。
それを見て、オレの心の
モヤッとしたのはおさまった。
「…。」
「ひろちゃん、どうしたの?」
「ねぇ、とおるくんて、
”くそかわとおる”だったの?」
ひろちゃんの視線を感じて話し掛けたけど、
先に口を開いたのは春人くんだった。
「違うから‼︎岩ちゃんたちのせいで、
春人くんが勘違いしてるじゃない‼︎」
「勘違いじゃねーよ!」
「ちょっと、岩ちゃん⁈」
「クソ川のくせに、いい家住んでんな〜」
「岩ちゃん⁈どういう意味⁈」
「春人、靴脱いで?手洗うよ〜?
あ、徹くん、おじゃましまーす。」
岩ちゃんが勝手な感想を言うと、
ひろちゃんはひろちゃんで、そこはスルー。
ほんと似た者夫婦だよ…。
「春人くん、手洗いますか?
じゃあ、こっちに…」
「…?
檜原さん、及川んち来たことあったのか?」
「え⁈」
素で出てしまった檜原さんのことばに、
鈍感なはずの岩ちゃんのツッコミが入る。
天然のほうが出ちゃったか…。
「檜原さん、さっき洗面所行ったんだよね。
ちょっと早めに来てもらったから。」
「あぁ。」
固まってる檜原さんに代わって答えると、
岩ちゃんは納得したようだった。
「檜原さん、悪いけど、
春人くん、連れてってあげてくれる?」
「あ…はい。」