第45章 -運命-(及川徹)[後編]
彼女はよく言えば、気遣いのできる人…
ちょっと悪く言えば、
気にしすぎなんだと思った。
気遣いできるコトはいいコトだけど、
お詫びやらお土産やら、
気を遣ってほしかったわけじゃないんだけどな。
アイスクリームを冷凍庫に入れながら、
ふとそんなことを思った。
「あの、準備、何から手伝えば…?」
「準備っていっても、
タコとかちょっと切るくらいなんだけどね。」
たこ焼き器や食器はもう出してあるし、
あとはほとんど袋から出すだけ。
「じゃあ…切ります…。」
おずおずとオレの横に来た彼女は、
腕まくりをした。
細い腕がチラリと見えるのが、
なぜだかちょっと気になってしまう。
「エプロンする?」
今日の彼女は細身のデニムに白シャツ。
腕まくりをしたから、細い腕が見えたけど、
たぶん生地のいいシャツを着ているのだろう。
彼女の下着が透けて見えるコトはなかった。
そういう意味では、ほんと隙がない。
「エプロン?大丈夫ですよ。」
「でも、白シャツ汚れちゃうかもよ?
はい、どーぞ。」
たまに使う自分のエプロンを彼女に渡す。
「え⁈あの…でも…」
「これじゃイヤ?姉さんの
メイドさんみたいなエプロンにする?」
「お…お借りします!」
姉さんのメイドさんみたいなエプロンなんて、
ほんとはないんだけどなぁ。
彼女は赤くなりながら、
オレの黒いエプロンを受け取り、
エプロンをつけようとした。
「後ろ、結んであげるよ。」
「え⁈で…できます‼︎」
少しもたついている彼女に声を掛けると、
彼女はまた赤くなって拒否した。
「いいから。ほら、貸してごらん?」
「ちょっ…」
「髪あげて?痛くない?」
彼女の後ろにまわり、
サッとエプロンの紐を取り上げ、
彼女の首元から結ぶ。
「は…ぃ…。あの…あとは自分で…」
観念したのか、彼女はおとなしい。
でも、耳まで真っ赤だ。
「いいよ。すぐ終わるから。」
そのまま手を彼女の腰まで下ろし、
ウエストのトコで紐を結ぶ。
オレより小さい彼女の腰で結ぶと、
かなり紐が余ってしまう。
「檜原さん、ウエスト細いね。」
「細くないですっ‼︎」
「紐余ってるよ?」
「それは…エプロンが大きいから…」