第45章 -運命-(及川徹)[後編]
-及川side-
「どーぞ☆」
「おじゃまします。」
わざとらしくてバレるかなぁ…
って思ってたのに、
彼女の疑うポイントはやっぱりわからなくて、
岩ちゃんたちが来る前に、
彼女と待ち合わせするコトができた。
別に不純な動機があったわけじゃない。
ただ、少しだけ二人きりで話したかったし、
タコ切ったり…手伝ってほしかっただけ。
きちんと靴を揃える彼女を後ろで感じつつ、
オレは買ったものをキッチンへ持っていった。
「洗面所、お借りしていいですか?」
「どーぞー。場所、わかるよね?」
「は……ぃ」
くくっ…洗面所わかっちゃうコトが、
恥ずかしいんだな…。
ほんといちいち可愛いなぁ。
この間泊めたコトもだけど、
ほんとになんでこんなに彼女が
気になるのだろう。
今日だって…
ウチに来てもらわなくてもよかった。
わざわざ岩ちゃん達まで呼んでまで…。
あずみだって
さすがにウチに来たコトはないし、
付き合ってもないのに、
ウチに呼ぼうとも思わなかった。
ちょっと前まで
あずみのコトを引きずっていて、
やっぱりオレのものにしたかった…
そう思ってたくせに…。
「及川さん…?」
後ろから呼ばれてハッとする。
いつのまにか
手を洗った彼女が来ていた。
「ごめんごめん。
準備、少し手伝ってもらっていい?」
「はい…あ、あの…先に…
これ、ありがとうございました。
それから、こっちは、
お礼というかお詫びというか…」
彼女が手渡してくれたのは、
オレがさっき持っていた
大きめのpatisserieHYBAの紙袋と、
さらにもう一つの紙袋から取り出した、
patisserieHYBAの小さな紙袋…
「そんなのよかったのに…」
「…‼︎甘いの、苦手ですか?」
「甘いのは好きだよ。
バレンタインでたくさんチョコもらうし♡」
「…そこは聞いてません。」
相変わらずそっけないなぁ。
「岩ちゃんたち来たら食べよっか。
ありがとね。」
「あ、それなら、アイスクリームが…」
「アイスクリーム?」
お菓子を受け取ると、
彼女はもう一つ紙袋を取り出した。
「こっちはお土産っていうか…」
「ありがとう。
そっちは冷凍庫に入れとこうか。」