第45章 -運命-(及川徹)[後編]
あ〜‼︎もう‼︎その感じ…ズルい‼︎
「もういい年なので、
”女のコ”って言われても…」
「そんなこと?いーじゃない♪
いくつになっても女のコは女のコだもの。」
顔がいいのは大前提として、
こうやってとことん女の人に優しいから、
この人はモテるのかもしれない。
思わずこっそり及川さんを盗み見てしまう。
「あれ〜?及川さんに惚れちゃった♡?」
「…っ⁈惚れてませんっ‼︎」
盗み見ていたはずなのに、
いつのまにかバッチリ
及川さんと目が合ってしまい、
わたしは慌てて目をそらした。
「惚れてくれていーのに♪じゃ、行こうか?」
「え?岩泉さんたちがまだ…」
「あぁ。岩ちゃんたちは12時に来るよ。」
「え⁈」
「岩ちゃん、仕込みの準備してから来るし、
春人くんもいるから、早すぎても大変だしね。」
そうだよね。
岩泉さんたち、日曜日もお店あるし…
ん…?あれ?
「…‼︎じゃあ、やっぱり、
迎えに来てもらわなくても、
大丈夫だったじゃないですか‼︎」
「え〜?なんのコト?」
「岩泉さんたちが12時に来るなら、
わたしが一人で及川さんちに行けても、
問題なかったじゃないですか‼︎
それに、時間も違うなんて‼︎」
”一人で来れちゃうと、岩ちゃんたちに
ウチに来たコトあるのバレちゃうよ?”
迎えを断ったわたしに
そう言ったのは、及川さんだ。
「そうかもしれないけどさ〜。
この紙袋、こないだ貸した服でしょ?」
「そう…ですけど…」
及川さんは紙袋の中身を少しだけ見て、
わたしに視線を向けた。
「コレ返すトコ見られてもよかった?
岩ちゃんは気付かないだろうけど、
ひろちゃんはなんかしら勘付くと思うよ。」
「…っ⁈」
…それは困る。
「それにさ…」
及川さんは紙袋を持っていないほうの手で、
わたしの手を握ってきた。
「ちょっ…」
「今日は二人きりじゃないからさ、
岩ちゃんたちが来る前に少しくらい
デート気分味わいたいなと思ってさ♪」
「は…はなしてください‼︎」
「ダーメ♪
間違えてお好み焼きソース買っちゃったんだ。
たこ焼きソース買わなきゃ♪
スーパー寄ってこうね♡」
「及川さんっ‼︎」
及川さんはわたしを無視して、
手を繋いだまま、歩き出してしまった。