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〜Lemon Candy Story〜

第44章 -運命-(及川徹)[中編]


「春人くん、元気?」


「うん♪幼稚園に春人の絵が飾ってあって、
めっちゃうまかったのー!徹くん、見る?」


ひろちゃんは、さっきの冷たい態度とは一転、
春人くんのコトになると途端に甘くなり、
オレの前で、思う存分
春人くん愛を爆発させていた。


「ほんとだー。上手だね♪」


「でしょー?」


「ひろ‼︎及川にばっか見せてねぇで、
オレにも見せろよ!」


「はいはい♪さっき写メ送ったよー?」


そう言いながらも、
ひろちゃんは、岩ちゃんの元へ駆け寄り、
写メを岩ちゃんに見せていた。


元々ラブラブな二人だったけど、
一人息子の春人くんが絡むと、
さらにラブラブ度が増す。


同い年の岩ちゃんのこんな姿を見ると、
たまにオレは何やってんだろ…と、
ポカンと胸に穴が開く感覚に陥る。


「徹くん?ほんとに今日はどうしたの?」


いつのまにか着替えてきた
ひろちゃんに呼ばれ、ハッとする。


「ねぇ、昨日のさ、
檜原さんて常連なんでしょ?」


「すみれちゃん?そうだけど…
すみれちゃんがどうかしたの?」


「いや…どんな人かなって思って。」


「どんなって…」


ひろちゃんが不思議そうにオレを見るけど、
オレは表情を崩さずにニコニコしていた。


「あのまんまだろ?
人当たりもいいし、礼儀正しい。
誰かさんと違ってな!」


まぁ…岩ちゃんの見立てはそんなのものだろう。
オレが聞きたいのは…


「でも、そのせいで自分を
押さえてるトコもあるかな。
周りを優先しちゃって、
あまり本音を言わなかったり…」


そう…ひろちゃんの見立て。
やっぱり女のコのほうがちゃんと見てるよね。


「あぁ…でも、だいぶウチでも
素を出すようになっただろ?」


「そうね(笑)けっこうドジだし、
素でボケてて可愛いし。
とってもいいコよ。」


「ココに男と来たコトは?」


「あん⁈たしかねぇんじゃねーの。
接待以外は大抵一人だな。」


「……。」


「ふーん。じゃ、そろそろ行こうかな。
また来るね。」


「おう?もう来んなー!」


岩ちゃんは素直に答えてくれるけど、
こういう時は、女のコは困るな。
ひろちゃんは何かを考えるように、
オレをジッと見ていた。


オレはその視線に気付かないふりをして、
”岩泉”を出た。

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