第44章 -運命-(及川徹)[中編]
「岩ちゃんトコまでのタクシー代でしょ〜?
それからまっつんトコの飲み代と、
まっつんトコからウチまでのタクシー代♪
あと、ウチの宿泊代♪ね、4つ〜♪」
立てていた指を1つ1つ折りながら数え、
及川さんはまたニッコリ微笑んだ。
「なっ⁈」
「”貸し借り”…イヤなんでしょ?」
…っ⁈そうだけど…でも…
「とりあえず、連絡先教えてよ?」
「…‼︎それは名刺に…‼︎」
「それは会社の連絡先でしょ?
プライベートのほうに決まってるじゃない。」
…。
「連絡先教えて、どうするんですか?」
「どうって…」
意味深にことばを溜めた及川さんは、
朝から妖艶な表情でわたしを見つめ…
「な〜いしょ♡」
「…っ⁈」
…たかと思ったら、
子どものような悪戯っ子みたいな表情で、
可愛く囁いてくる。
「いい加減にしてくださいっ‼︎
ご迷惑お掛けしたコトは謝ります‼︎
お金でもなんでも払います‼︎
だから、もうからかわないでっ‼︎」
わたしは思わずテーブルをドンと叩いて、
立ち上がってしまった。
「ほんとかわいいなぁ。
ごめんごめん。でも、からかってないってば。
4回さ、デートに付き合ってよ?」
「え…?」
えっと…十分からかってますけど…?
「いーじゃない。
別にHなコトはしないよ。約束する♪
あ、檜原さんがしたかったら、
及川さんは大歓迎だけどー♡」
「な…っ⁈そんなコトしないってば‼︎」
「…♪じゃ、デートはOKってコトね?」
「〜〜っ⁈」
や…やられた〜っ‼︎
「んじゃ、連絡先教えて?」
わたしが何も言えずにいると、
もうわたしに反論の余地がないと思ったのか、
及川さんはスマホを取り出した。
はぁ…
今日借りている服は返さないといけないし、
やっぱり迷惑掛けたから、お詫びしなきゃだし…
結局わたしは及川さんと連絡先を交換した。
「どこにデート行こっかな〜♡」
及川さんは一人ルンルンで、
いったん部屋に戻ると、
ネクタイを2本持ってきた。
「ネクタイ、どっちがいいかなー?」
水色と紺のネクタイを見せてくる。
「どっちでもいいです‼︎」
「えー?檜原さんが
選んでくれたのしたい気分なんだよー‼︎」
…⁈ほんとモテ男はわからない。