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〜Lemon Candy Story〜

第44章 -運命-(及川徹)[中編]


及川さんの部屋から戻り、
わたしは急いで支度をした。


及川さんを待たずに、
先に家を出てしまおうと思って…。


でも、実際は思惑通りにはいかず、
わたしがこっそり部屋を出ると、
及川さんは既に準備を終えて
キッチンでコーヒーを淹れていた。


「あれ?もう準備できたの?
ゆっくりでよかったのに。」


「いえ…」



…っ⁈


まだネクタイをしていない
スーツ姿の及川さんに
思わずドキッとして、
さっきのコトまで思い出してしまい、
また真っ赤になってしまう。


「どうしたの?
さっきから百面相してるけど?」


「え⁈いえっ…」


「コーヒー飲む?」


「はい…あっ…」


先に行くつもりだったのに、
思わず頷いてしまった。


ダメだ…及川さんといると、
自分のペースが乱されちゃう…


「パン食べる?」


「いえ…」


「じゃ、ヨーグルトとフルーツでいい?
少しは食べていかないと今日持たないよ?」


及川さんはそう言うと、
ダイニングテーブルの椅子を引いて、
わたしを座らせてくれた。



お姫さまみたいに…



…⁈って、何勝手にメルヘンなコトを…
わたし…昨日から変だ…


「はい。コーヒー。
ミルクと砂糖はいらないよね?」


「はい。…?」



なんで、ミルクと砂糖のコト……?




「昨日ウチの会社でコーヒー出した時、
ミルクと砂糖、使ってなかったよね?」


「…‼︎」


ほんとによく見てる…


「キライなモノない?大丈夫?」


そう言って及川さんは向かいの席に座り、
わたしの前にフルーツとヨーグルトを置いた。


「いただきます♪いーね♪
なんか新婚さんみたーい♡」


「は⁈なんで新婚⁈話飛躍しすぎ‼︎」


あれ、昨日こんなツッコミ誰かが…


「ね、あーん♡てしてよー♪
それとも、及川さんがしてあげよっか?
はい、あーん♡」


「…っ⁈ど…どっちもしないってば‼︎」


及川さんがわたしの口の前に
スプーンを持ってくるので、
わたしは慌ててコーヒーを飲んだ。


「ちぇ〜っ。でもさ、忘れないでよね?」


「え…?」


「檜原さんは、4つ‼︎
オレに”借り”があるってコトを♪」


その素敵な笑顔の前で指を4つ立てて、
わたしをロックオンする及川さんを前に
わたしは動けなくなってしまった。

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