第44章 -運命-(及川徹)[中編]
及川さんの正論に
わたしが何も言い返せないでいると、
及川さんはさらに後を続けた。
「嘘ついたのは悪かったよ。
でも、昨日も言ったけど、
いくらタクシーでもあの時間に
女のコを一人で帰すのは心配だったんだ。
それは、ほんと。」
……ズルイ。
そんな言い方されたら、
怒りたいのに怒れないじゃない…。
「すみません…」
「大丈夫だよ。でも…ちょっと撫でて?」
わたしが小さな声で謝ると、
及川さんは弱々しく微笑み、
少し痛そうに自分の頬をさすった。
「ごめんなさ…⁈」
グイッ…
さすがに申し訳なくて、もう一度謝り、
及川さんの頬に手を伸ばすと、
弱々しく微笑んでいたはずの及川さんは、
ニコッと嬉しそうにまたわたしの手を掴み、
ベッドの中に引き入れた。
「あの…ちょっ⁈」
「うーん…檜原さんの準備の時間も考慮して…
8時15分くらいまでかなぁ♪うん‼︎それまで、
もうちょっとお布団でヌクヌクしよー♡」
及川さんはそう言うと、
またしてもわたしの胸に顔を埋めてきた。
「ちょっ…及川さん‼︎やめてってば‼︎」
「なんで〜?だって気持ちいいし、
なんか落ち着くんだもん♡」
及川さんは胸に顔を埋めたまま、
わたしを抱き締める手で、
ゆっくりわたしの身体を撫でている。
「ちょっ…やっ…」
「ねぇ、檜原さんて何カップ?」
「は⁈何言って…⁈言うわけないでしょ‼︎」
散々正論言われたけど、
やっぱり及川さんてただのヘンタイじゃない‼︎
「昨日おんぶした時も思ったんだけど、
柔らかいし、けっこう大っきいと思うんだよね…
でも、仕事の時は目立たない感じだったからさ、
小さく見えるブラとかしてる?」
「…っ⁈」
な…なんでわかったの⁈
及川さん、わたしのブラ見た⁈
「その感じは及川さん正解だったのかな?」
「…っ‼︎⁈」
「ふ〜ん♪
それ知ってるのもオレだけってコトかぁ♪」
わたしが何も言えないでいると、
及川さんは一人満足そうに頷いていた。
「ね、檜原さんもギューッてしてよ♡」
「…っ⁈し…しません‼︎」
わたしは及川さんを突き飛ばし、
及川さんの部屋を出た。
い…一瞬、ギュッて…
したくなっちゃったじゃない…
及川さんのバカ‼︎