第44章 -運命-(及川徹)[中編]
-すみれside-
「んん…」
あまり…眠れなかった…。
酔って寝てしまったせいもあるけど、
ココが及川さんちで、
及川さんにおんぶされてココまで来て、
及川さんにスッピン見られたり、
あり得ないコトばかりで…
でも、何より、
今、隣の部屋に及川さんがいると思うと、
ちっとも落ち着かない。
今…何時だろう…
枕元に置いたスマホに手を伸ばす。
「……っ⁈7時半⁈」
どの頭が”あまり眠れなかった”
なんて思ったんだろうか。
十分寝ている。てゆぅか、寝過ぎっ‼︎
”赤坂から電車で1時間以上かかる郊外”
及川さんはそう言っていた。
というコトは、恐らく、
及川さんちは都内ではないのだろう。
NEKOMAデザインも青西建設も、
赤坂ではないけど、都内だ。
1時間は見ないと…会社に間に合わない‼︎
わたしはバタバタとベッドを抜け出し、
一目散に及川さんの部屋へ向かった。
トントントン‼︎
「及川さんっ‼︎」
トントントン‼︎
……返事がない。早く起こさなきゃ…
返事ないけど…
ガチャ‼︎
「及川さんっ‼︎起きてくださいっ‼︎」
「スゥ…スゥ…」
わたしがベッドまで駆け寄ると、
及川さんは規則正しい寝息をたて、
気持ち良さそうに眠っていた。
「及川さんっ‼︎遅刻しちゃいます‼︎
起きてくださいっ‼︎」
及川さんの肩を揺するけど、
及川さんはまったく起きる気配がない。
「及川さんっ‼︎及川さんてば‼︎」
「んん…うる…さいなぁ…」
グイッ…「きゃっ…」
及川さんを起こしていたはずが、
グイッと及川さんに引っ張られてしまい、
わたしは及川さんの上に
なだれ込んでしまった。
「及川さんっ⁈はなしてくださいっ!」
必死で離れようとするけど、
及川さんの力は思いの外強くて、
抵抗がまったく意味をなさない。
「んん…ふぁ…ん…気持ちい…」
「やっ…おいか…わ…ぁっ…」
及川さんは寝ぼけているのか、
わたしにギューッと抱きついてくる。
「ダメ…ぁっ…はなして…起きて…」
抱きついてくるばかりか、
事もあろうに及川さんは、
わたしの胸に顔を埋めてきた。
「んん…
ほんとに夜這いに来てくれたんだぁ♡」