第44章 -運命-(及川徹)[中編]
「なぁに?」
ゆっくりバスルームへ向かうと、
バスルームのドアがほんの少し開いていた。
彼女がそこにいるのがわかる。
「あ…あの…
お借りする身で図々しいんですけど…」
「うん?」
「あの…服…Tシャツしかなくて…その…」
「Tシャツ大きいから
それだけでも大丈夫なんじゃない?」
「だ…大丈夫じゃないですっ‼︎
何か下に履くもの、貸してくださいっ‼︎」
彼女は見えないのに、
彼女がどんな顔をしているのか、
容易に想像できて思わず笑みがこぼれる。
「う〜ん…どぉしよっかなあ♪」
「な…っ⁈お…及川さんのじゃなくても‼︎
それこそ、お姉さんの服のほうが…」
「姉さんの?いいけど、姉さんのだと、
バスローブかテロンテロンの
超セクシーなパジャマだけど?」
「…っ⁈⁈えぇ⁈」
ま、もちろん嘘なんだけど♪
ほんとに彼女の疑うポイントがわからない。
でも、彼女はかなりピュアなんだと思う。
だからこそ…
からかうのがちょっと楽しかったりもする。
「じゃあ、取ってくるね♪
バスローブとパジャマ、どっちがいい?
及川さん的には、
セクシーなパジャマのほうがいーなー♡」
ガチャ‼︎
「ちょっ…‼︎そんなの着ませんっ‼︎…っ⁈」
「…っ⁈」
ほーらね♪
って、もう少し時間かかるかと思ってたけど…
オレの挑発に乗ってしまった彼女は、
あれほどスッピンを
見せたくないと言っていたのに
今、オレの前にスッピンで立っていた。
彼女はスッピンになっても
そこまで変わらなくて、
むしろ、幼く見えて可愛らしい。
そんな彼女は、
今オレのTシャツしか着ていなくて、
お尻まで隠れてはいるけれど、
ナマ脚の太ももが露わになっているし、
エメラルドグリーンのTシャツ越しには、
無防備な胸の膨らみが晒されている。
彼女の姿に思わずドキッとした。
「やっぱり、スッピン可愛いじゃない♪」
「あ…あの…」
今までの強気な彼女とは一転、
彼女は真っ赤になってオロオロしている。
「もっとよく見せて?ね?
こんなに可愛いのになんで見せたくないの? 」
「…っ」
彼女はさっきから何も言わない。
「黒尾くんにも見せたコトないの?」
なんでこんな時に
黒尾くんが気になるんだろう。