第44章 -運命-(及川徹)[中編]
「シャンプーとかも女性用あるし、
化粧品もあるし…あ!あと、
コテとかヘアアイロンもあるよ。
だから、明日も困らないと思うけど。」
あるよ”って、なんかのドラマの
バーテンさんかっ‼︎
てゆぅか、なんでそんなに…?…‼︎
「及川さん、既婚者ですか⁈」
「なんでそうなるの?違うよ。」
「じゃあ、同棲中?」
それなら、彼女さんに申し訳なさすぎる‼︎
「それもハズレ。一人暮らしだし、
ご存知の通り今は彼女無し。」
いや、ご存知の通りって…
一ノ瀬さんにフラれたコトしか
知らないってば…とは言えず…。
「はぁ…。この家は姉さんち。
旦那さんの仕事の都合で
今は仙台に戻ってるから、
オレが格安で借りてるの。
元は姉さんちだから、
姉さんの物…つまり女物がある…ってわけ。
東京来るたびにウチに泊まるから、
姉さんの部屋はそのままなんだ。」
一応筋は通ってるけど…でも…
「あとは何か?
ウチに泊まれない理由ある?」
「ス…ッピン…」
「え…⁇」
及川さんはキョトンとして
わたしを見つめてきた。
だ…だから…
見つめられるの、恥ずかしいってば‼︎
「スッピン‼︎
見られるの、すごい恥ずかしいですっ‼︎」
思わず大きな声で言ってしまう。
取引先の…しかも男の人に、
スッピン晒すなんて、絶対イヤ‼︎
「…っ‼︎ははっ(笑)
檜原さんて意外と乙女だね♪」
「な…っ⁈」
及川さんはわたしの恥じらいを
一瞬で笑い飛ばしたかと思うと、
「スッピンも可愛いと思うんだけどなぁ。」
そう言って、わたしの頭を撫でていた。
「イヤなら、見ないよ。」
「…っ⁈」
及川さんの声と動きで、
わたしは真っ赤になってしまう。
「で?他に泊まれない理由は…?」
もう断る言い訳が思いつかない…
それに、こんなに優しくされたら…
甘えたくなっちゃうじゃない…
甘えて…いいの…?
「な…いです。」
「じゃ、どーする?」
う…‼︎なんか…やっぱり悔しい‼︎でも…
「泊めて…ください…」
「最初からそう言えばいいのに♪
こっちにおいで…」
また嫌味を言われるかと思ったのに、
及川さんは優しくわたしの手を引いて、
別の部屋に案内してくれた。