第44章 -運命-(及川徹)[中編]
-すみれside-
夢を見た。
すごく心地良い夢。
気持ち良く眠っていると、
優しく声を掛けてくれる王子様がキスを……
ガタッ…ドンッ‼︎‼︎
してくれそうな瞬間に、
わたしはどこかから落ちた。
「いった〜っ…」
あ…れ…?
わたしはどうやらソファから落ちたらしい。
でも、クルリと周りを見渡してみるけど、
見たコトのない部屋だし、
見覚えのない毛布が掛けられている。
え?わたし…今日はたしか…
青西建設に行って、
その後岩泉さんのお店で接待があって…
ガチャ…
「大丈夫?すごい音したけど。」
…っ⁈及川さん⁈
そうだ…黒尾くんと別れて、
及川さんと二人で駅まで行くはずが、
ワインバーに入って…あれ…?
…っ⁈
及川さんはお風呂あがりのようで、
ラフな格好で髪を拭きながら、
ミネラルウォーターを飲んでいた。
「酔いは冷めた?」
「あの…」
てゆぅか、及川さんお風呂あがり⁈
ウソ…わたし…
「なぁに?」
「わたし…何をしてしまったのでしょうか?」
「”何を”って?」
及川さんはミネラルウォーターを
もう一本開けて、わたしに差し出してくれた。
「その…及川さんを…襲った…とか?」
「襲っ…⁈ははっ(笑)それ、いいなぁ♪
さすがに女のコに襲われたコトはないな♪」
「え…?」
「襲ってくれるの⁇襲いたかったの(笑)⁇」
「は⁈えっ⁈そ…そんなコトしませんっ‼︎
何言ってるんですかっ‼︎」
慌てて否定すると及川さんは面白そうに
ずっと笑っていた。
「自分で言ったんじゃない。
でも、ずっとその格好でいられたら、
誘惑されてるみたいで、
及川さんのほうが襲いたくなっちゃうかも♪」
「え…?」
及川さんのことばの意味がわからず、
思わず自分の姿を確認する。
ソファから落ちたせいで、
インナーの半袖ニットがズレてしまい、
胸元がはだけていて、
タイトスカートもかなり際どいトコまで
捲れ上がっていた。
「やっ…」
慌てて毛布で身体を隠す。
「あ…の…ほんとに…わたし…」
全然覚えてない…
でも、及川さんのこの感じだと、
変なコトは特に…
ううん…及川さんの言うコトはよくわかんない…