第43章 -運命-(及川徹)[前編]
「あ‼︎この間言ってた、
乱暴する”岩ちゃん”て…」
「そう♪乱暴者の岩ちゃん☆」
及川さんはテヘッ☆とふざけながら、
岩泉さんの肩を叩いた。
「あん⁈おまえ、限定だよっ‼︎」
岩泉さんは倍返しと言わんばかりに、
及川さんの頭を殴った。
「いったーい‼︎酷いよ、岩ちゃん‼︎」
二人のやりとりに、
思わずクスクス笑ってしまう。
ナンパ男でもなく、
仕事モードでもなく、
さっきのドキドキさせる”男”でもなく、
素の…自然体の及川さんは、
なんだか子どものようで可愛かった。
「あ‼︎檜原さん、笑った‼︎」
「わ…笑ってません‼︎」
岩泉さんと話していたはずの及川さんに
突然言われ、わたしは慌てて笑うのをやめた。
「やっぱりクールビューティより、
笑ってるほうが可愛いじゃーん♪」
「だ…だから!クールビューティでもないし、
可愛くもありません‼︎」
「クールビューティ⁇檜原さんが⁇」
わたしと及川さんのやりとりを見て、
岩泉さんは首をかしげた。
「ほら‼︎岩泉さんも言ってるじゃない‼︎」
「まぁ、仕事で来る時はそうかもなぁ。」
「ほら〜‼︎
岩ちゃんだってそう言ってるじゃない♪」
ちょっ…‼︎岩泉さんっ‼︎
「すみれちゃん、
お仕事の時は、そうかもしれないけど、
普段は、可愛らしいよね。意外と抜けてるし。」
ひろみさん…それはフォローですか⁈
「ほら〜♪ひろちゃんからも一票入った♪」
及川さんは相変わらず
子どものように嬉しそうだった。
岩泉さんからの扱いは酷いけど、
かなり気を許しているんだろうな…。
でも、今度から”岩泉”に行きづらくなるなぁ。
今までニアミスしなかったコトが奇跡だけど、
今後及川さんと鉢合わせしちゃうのは、
なかなか気まずい。
「すみれちゃん、
今まで通りお店に顔出してね?」
「え…?」
「すみれちゃんがいる時に徹くんが来たら、
追い返すから(笑)♪」
ひろみさんはわたしの表情から
感じ取ったのか、
わたしを安心させることばをくれた。
「ひろちゃん、ひどーい‼︎」
及川さんはまたプリプリしてしまったけど、
この二人といると、
やっぱり及川さんは楽しそうだった。