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〜Lemon Candy Story〜

第43章 -運命-(及川徹)[前編]


「ちょっ…及川さん⁈
エレベーター、そっちじゃ…」


及川さんはエレベーターを通過して、
そのまま裏口から出て行ってしまう。


「及川さん⁈あの…どこに⁈」


「…。乗って?」


及川さんはわたしの質問には答えてくれず、
そのままタクシーを拾って、
わたしをタクシーに押し込んだ。


「ちょっ…及川さんてば‼︎」


「赤坂の”岩泉”までお願いします。」


及川さんが行き先を告げると、
タクシーはそのまま走り出す。


「及川さん‼︎あのっ‼︎」


「しーっ♪」


「え?…っ‼︎」


及川さんの視線を辿ると、
タクシーの運転手さんがミラー越しに
こちらの様子を伺っていた。


オフィス街で乗ったのに、
恋人同士の修羅場だとでも
思われてるのだろうか?


さすがにわたしも黙ったけど、
事もあろうに及川さんは、
スーツの上着を脱いだと思ったら、
その上着で手元を隠し、
わたしの手を握ってきた。


「…っ⁈」


あまり騒ぎたくなかったので、
わたしは視線だけで及川さんに訴えかける。


「そんな怖い顔しないでよ。
綺麗な顔が台無しだよ?」


…っ‼︎


耳元で囁かれてしまい、
わたしは不覚にも真っ赤になってしまう。


「じゃあ、この手、はなしてください。」


あまり大声も出せないので、
わたしは顔を隠すように下を向いて、
もう一度、及川さんに訴える。


「このほうがスリルあって楽しくない?」


…っ⁈


はぁ⁈


及川さんは、それはそれは楽しそうに
満面の笑みでわたしに囁きながら、
上着の中の手を、わたしの指に
絡めたりほどいたりして、遊んでいた。


…この間の仕返し⁈


モテ男のするコトはわからない。




でも、この温かい手…キライじゃない。




一瞬そんなコトを思ったけど、
それも錯覚だ‼︎と、
必死で前だけを見て、隙あらば、
及川さんの手をはなそうと思っていたのに、
あっという間に赤坂に着いてしまい、
タクシー代を払うときに
及川さんはやっと手をはなしてくれた。


「あの‼︎半分払います‼︎」


本当は電車で行くはずだったのだ。
上司の分ならともかく、
わたしたちのタクシー代は会社からは出ない。


「ははっ♪随分男前だね。
及川さんが勝手にタクシー乗ったんだから、
気にしなくていいよ♪」

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