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〜Lemon Candy Story〜

第43章 -運命-(及川徹)[前編]


それから3日後、上司と黒尾くんと3人で、
青西建設へ出向いた。


百歩譲って、黒尾くんから
仕事を引き継ぐのは仕方ない。
わたしもイチ会社員だし。


でも、青西建設に行くのは…
まだ少しだけ勇気が必要だった。


一ノ瀬あずみさん…
黒尾くんの彼女がいるから。


夜久くんからも話を聞いたコトがあったけど、
ほんとにいいコなんだろうな。


あのパーティーで会った時も、
周りの人とも楽しそうに話していて、
それでいて黒尾くんと話している時は、
最高にいい笑顔で、
わたしにないものをすべて持っている
”可愛い”が詰まった理想的なコだと思った。


黒尾くんだって…あの及川さんだって、
あんなに夢中になっているのだから。


まぁ、青西建設に行ったからって、
さすがに彼女に会うコトはないだろうけど…。


「黒尾くん、顔がニヤけてる…」


「え⁈や‼︎ニヤけてないですっ‼︎」


黒尾くんは否定するけど、
青西建設が近づいてくると、
黒尾くんの表情が
微妙に緩んでいくのがわかった。


「バレバレよ?
写メ撮っておこうかしら?」


「ちょっ…檜原さ〜ん‼︎」


片想い長い女をナメんなよ〜?
はぁ…イヤんなっちゃうくらい、
黒尾くんの表情の変化が目につく。


でも、もちろんため息は
バレないようについて、
フフンと先輩ぶって余裕を見せる。


「てゆぅか、檜原さん、
今日の接待ほんとに大丈夫ですか?」


今日は、挨拶のあと、懇親会も兼ねて、
青西建設の接待があった。
ウチがご迷惑掛けているので、
もちろんウチがもてなす側だ。


「なんで?」


別に特別な接待ではない。
要はただの飲み会なのだから。


「檜原さん、昨日帰り遅かったから。」


「…っ⁈」


ドキッ…。
たしかに昨日は、
今日の下準備がしたくて、残業した。
わたしより先に帰ってたのに、
なんで残業してたコト、気付くかなぁ…。


素でそういうコト言うんだから、ズルイ。


「酒弱いんだし、無理しないでくださいね?」


「大丈夫よ。ありがとう。」


でも、もちろんドキッとした
感情なんて1ミリも見せない。


「黒尾、檜原、行くぞ?」


”女”になんかなってられない。
わたしはガッツリ仕事モードで、
青西建設に乗り込んだ。

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