第43章 -運命-(及川徹)[前編]
我ながら意地悪な聞き方だと思ったけど、
受付で会った時から感じていた
彼女への違和感…。
あずみの名前に反応して、
やたらあずみを見つめ…そして、今。
勘がいいとか悪いとか関係なく、
だいたい見当がつく。
「お姉さん、黒尾くんの元カノ?」
「違うわよ‼︎」
ペチンッ‼︎
「…いってぇ。
ちょっと‼︎岩ちゃんより乱暴なんじゃない⁈」
「あ…ごめ…‼︎岩ちゃんて誰よ⁈
だいたい‼︎初対面のくせに失礼じゃない‼︎」
彼女はオレを殴ったコトを
一瞬後悔したように、謝りかけたが、
よっぽど気が強いのか、
さっきよりヒートアップして怒り出した。
「初対面だけどね、
あずみを尋常じゃない目で見てる女がいたら、
放っとけないからさ。」
「……貴方こそ、彼女の元カレ?」
「元カレじゃないよ。
あ〜…そっちは?
てゆぅか、いい加減名前教えてよ!
名前わかんないと、呼びにくいじゃん‼︎」
「ナンパ男に教える名前はありません‼︎
元カレじゃなかったら、何よ?
あのコにフラれたの?
フラれたのにヒーロー気取り?」
痛いトコつくねぇ…
「フラれてはないよ。
珍しく追い掛けたくなった女のコが
オレじゃない男を好きになっただけ。」
言う必要ないのに…
まるで自分を守るかのように
キツイ言葉を浴びせる彼女に、
思わず本当のコトを言ってしまった。
「それってフラれたってコトでしょ?」
彼女は少しだけ申し訳なさそうに言った。
「いいんだよ。」
「…何がいいのよ?」
「オレがフラれたって思ってると、
あずみが気にしちゃうからね。」
笑顔を作ってこたえると、
優しくなったように感じた彼女は
血相を変えてまた怒鳴った。
「バカじゃないの⁈貴方、バカ⁈
そこまで優しくしてあげる必要ある⁈」
「いいんだよ。オレがそうしたいんだから。」
「……。」
「で?お姉さんは?
オレも言ったんだから、話してみたら?」
「同じよ。珍しく自分から好きになった男が、
他の女を好きになっただけ。」
やっぱり…
「で?あずみに逆恨み?」
「ほんっと失礼‼︎
そんなアホ女みたいなコトしないわよ‼︎」
当たり前だけど、
彼女は怒って行ってしまい、
結局名前は聞けずじまいだった。