第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
-黒尾side-
ちょうど会社を出た時に、
檜原さんからの着信があり、
テンションがあがっていたが、
まさかの檜原さんからの告白。
オレは駅まで走って、電車に飛び乗った。
先越された…。
つぅか…
オレはスマホを取り出し、
檜原さんにメッセージを送った。
”一目惚れなら、オレのが先だから‼︎”
よく考えたら、オレは返事をしないで、
電話を切っていた。
ウチの会社から檜原さんの会社までは、
電車で約15分。
檜原さんは待っていてくれるだろうけど、
その間、不安がってしまうだろう。
近いと思っていたのに、
今日は一駅一駅がほんとに長く感じて、
空いているのに座席に座らずに、
ずっとドアの前に立っていて、
やっと檜原さんの会社の駅に着いて、
オレは猛ダッシュであのカフェに向かった。
「檜原さんっ‼︎」
オフィス街だから、残業後の遅い時間は、
街灯の明かりしかなかったが、
あのカフェの前に檜原さんはいた。
「ごめん、カフェ終わっちゃってたんだな。
かなり待ったよな?」
「いえ。あの…ごめんなさい。
急に…その…」
「なんで謝んの?」
…ギュ。
「黒尾さん…⁈」
気持ちを伝える前に身体が先に動いて、
檜原さんを抱き締めていた。
「オレも好きだから。」
「…‼︎」
「だから、謝んないで。」
「は…い。」
「よーし。いいコだ♪」
オレは抱き締めたまま、檜原さんの頭を撫でた。
「でも…何かあったのか?」
「え…?」
「めっちゃ嬉しいけど…
檜原さん、泣いてたろ?」
電話越しの檜原さんの声は、涙声だった。
「及川さんが…」
檜原さんは、オレの腕の中で、
オレに電話する前に起こったコトを
包み隠さず話してくれた。
「そっか…」
なんだか色々先を越された上に、
あの人に絶妙なパスを出された気がする。
告白まで檜原さんに先にされたし、
ゴールはきちんと決めなきゃ…だよな!
「さっきの一目惚れの話だけどさ?
あれ、絶対オレのが先だから。」
「え…?」
「オレらが初めて会ったのっていつだと思う?」