第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
「え…?わたしが黒尾さんの飲み物…
こぼしちゃった時…」
檜原さんはオレの腕の中で不思議そうに言うと、
そのまま顔をあげてオレを見つめてきた。
「ブーッ。それが違うんだなぁ。」
「え⁈いつ…?わたし、忘れて…⁈
ごめんなさい‼︎失礼ですよね。」
「いや、そん時、オレ喋ってねーし。」
「…?」
檜原さんはますますポカンとして、
そろそろ口もポカンと開いてしまいそうだった。
「檜原さんがオレの飲み物こぼす
1ヶ月くらい前にさ…あのカフェで
檜原さんが教えてくれたんだ。
ショット追加の無脂肪ミルクの
トールサイズのカフェラテ♪」
「…‼︎」
「な?だから、一目惚れはオレのが先♪」
「ウソ…?あの時の…⁈」
「あれ?教えたのは覚えてたんだ?」
「心の声がダダ漏れだった人…?」
「そ♪ダダ漏れだったのが、オレ♪」
はぁ〜やっと言えたなぁ。
オレは今度は大きく目を見開いて
ビックリしている檜原さんを見つめた。
「告白は先にされちゃったけど、
一目惚れはオレが先♪な?わかった?」
「う…ん。」
「な?…”すみれ”って呼んでいい?」
「うん。もちろん。」
「すみれ…好きだ。」
オレは初めて下の名前で呼んで、
もう一度強くすみれを抱き締めた。
「…っ⁈黒尾…さん…」
「えー?オレも下の名前で
呼んでほしーんだけどー?」
「ぁ…あの…えっと…」
「ほら〜?早く〜♪」
オレはギューッギューッと何回も
力を込めて抱き締めてすみれを促した。
「鉄朗…」
「なーに?」
抱き締めていた力を少し緩めて
すみれの顔を覗き込むと、
暗がりの中でもすみれが
照れまくっているのがわかった。
「鉄朗といるといつもドキドキする…。」
「そりゃ、オレもだけど?」
「ちゅ…中学生みたいって
呆れちゃうかもしれないけどね、
鉄朗と再会した時…運命みたいって思って…」
…‼︎
「そりゃ、オレもだけど?」
「え⁈」
「一緒だな♪」
……チュ。
オレは運命の相手にキスをした。
---End---