第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
…?
黒尾さんは、真剣な表情で、
わたしをジッと見つめている。
「及川さんと付き合ってるの?」
「え⁈」
「及川さん、檜原さんのコト、
下の名前で呼んでるし。」
「つ…付き合ってないです‼︎」
わたしは慌てて否定した。
この間…エレベーターの中で
抱き締められた時はビックリしたけど、
次の日、及川さんは何もなかったように
いつも通りだった。
「及川は、基本的に女性のコトは
下の名前で呼んでるので…」
それはウソではない。
でも…言われてみると、
社内で、呼び捨ての人はいないような…?
わたしが気付いてないだけかな。
「(ホッ…)そうなんだ♪
じゃ、やっくんが言ってたようにフリー?」
「はい…って、えぇ⁈夜久さん⁈」
なんで、夜久さんがそんな⁈
って、思い出した…。
前に電話で、花巻さんの結婚話から、
そんな話したっけ…。
「ははっ♪で?どっち?」
こっちは本気で焦っているのに、
黒尾さんは楽しそうにわたしを見ている。
「もう‼︎夜久さんの言うように、
フリーですよっ!」
わたしはついスネながら答えてしまった。
「そうなんだ♪」
「黒尾さんは?」
「何が?」
…‼︎絶対わかってるのに、黒尾さんは
ニヤニヤしながらわたしを見ていた。
「もう‼︎人に聞いてばっかでズルいです‼︎
黒尾さんはフリーなんですか?」
指輪してないから、
結婚はしてないんだろうけど…
彼女いるって言われたら…どうしよう…。
「フリーだよ。フリー仲間じゃん♪」
ドキッ…
「…‼︎すみません。
メール見てもいいですか?」
「どうぞ。」
胸の高鳴りと同時に、
仕事用のスマホが揺れたのを感じ、
わたしは黒尾さんに断ってスマホを見た。
「あ…この件て…」
わたしは手帳を開いて、内容を確認し、
メールの返信をした。
「すみませんでした……黒尾さん?」
スマホから顔をあげると、
黒尾さんは、向かいの席から、
わたしの手帳に何かを書いていた。
「ちゃんと新しいページに書いたから。」
「え…?」
「フリー仲間だし、
よかったら連絡してほしいな。」
…‼︎
手帳の新しいページには、
黒尾さんの連絡先が書いてあった。