第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
-すみれside-
「おいし〜っ‼︎
コレで800円はお得ですね‼︎」
「気に入ってくれてよかった。」
黒尾さんの魅力的な提案に、
かなり迷ったのだけど、
わたしが選んだのは、隠れ家和食ランチ。
”隠れ家”というだけあって、
少しわかりにくい場所にある上に、
席も半個室になっていて、
まさに”隠れ家”のようなお店だった。
NEKOMAデザインに行くだけで、
朝からドキドキしていたのに、
ちょっとだけ…黒尾さんに会えるかな…
なんて期待してはいたんだけど、
ほんとに黒尾さんに会えて、
まさかお昼まで一緒に食べられるなんて!
夜久さん、ごめんなさい…
でも、花巻さんの無茶振りに感謝‼︎
花巻さんにシュークリーム買ってこうかな♪
そんな現金なコトを思うくらい、
わたしはドキドキして浮き足立っていた。
「おっしゃれ〜なパスタランチも
すごく気になったんですけどね。」
「あそこは女子人気高いだけあって、
デザートもオススメかな。」
「デザート‼︎
あ〜‼︎そっちも気になってきました!」
「ハシゴする♪?」
「あはは♪したいですね♪」
黒尾さんと話していると、
次から次へと会話が広がり、
どんどん笑顔が増えていく気がする。
「そういえば、及川の愚痴って?
ちゃんと聞きますよ?」
わたしはさっきのコトを思い出し、
黒尾さんに尋ねた。
「あぁ…あれね。うーん…
ワガママ王子っぽいところとか?」
「ワガママ王子‼︎なんかピッタリ!」
そこでまた2人して笑ってしまう。
及川さん、ごめんなさい。
「でも、ワガママに見せかけて、
すごい周りをよく見てくれてるんです。
人一倍気配りしてるし…。
でも、それを人に見せないっていうか、
こっちが気付かない間に解決させてたり。
見てないようで何でもお見通しで…。」
「…。」
「…黒尾さん?」
「だから、腹たつんだよなぁ。」
…?笑ってはいるけど、黒尾さんは一瞬…
一瞬だけど、顔をしかめた気がした。
どうしたんだろ…。
「そ、そういえば、この間、及川、
変なコト言ってませんでした?」
「変なコト?」
「わたしの悪口とか…」
「あぁ…檜原さんて…」
黒尾さんは何かを考えるようにしてから、
話し出した。