第42章 -運命-(黒尾鉄朗)
「あれ?クロ、知り合い?」
やっくんが不思議そうにオレらを見る。
「あぁ。やっくんこそ、
檜原さんと知り合いだったのか?」
親しげな二人を見て思わず内心焦ったが、
平静を保ってやっくんに聞いた。
「いや、檜原さんとは、
今名刺交換したばっか♪…な?」
「はい♪花巻…あ、わたしの上司が、
昨日夜久さんにムリ言って
デザイン案の追加をお願いしてしまったので、
それをわたしが受け取りに。」
「へぇ…」
今名刺交換したばっか…の割には、
やっくんと檜原さんは、
かなり打ち解けてるように見えた。
「オレ、そろそろ行かなきゃ!
じゃ、檜原さん、花巻さんによろしく!」
「はい!夜久さん、
ほんとにありがとうございました!」
やっくんは腕時計を見ると、
慌てて檜原さんに挨拶して、
そのままデスクに戻ってしまった。
「お久しぶりですね。」
やっくんが行ってしまうと、
檜原さんは改めてオレに話し掛けてくれた。
「あぁ。」
「今日、急遽、
NEKOMAデザインさんに行くことになって、
黒尾さんに会えたらいいなぁって思ってたら、
ほんとに黒尾さんに会えたから、
ビックリしちゃいました♪」
…っ⁈⁈
やっべぇ…
意識してねぇと…オレ、ニヤけるわ。
「オレもなーんか聞き覚えのある声したから、
ビックリした。」
でも、もちろん表情は変えずに話を続けた。
「及川は無茶な要求してませんか?」
…って、ココで及川さんの話かよ…。
ま、オレらの共通点の1コだしな。
「相変わらず無茶苦茶ですよ?」
「すみません。
帰ったらお説教しておきますね。」
「檜原さんがお説教?オレもしてして♪」
「何言ってるんですか〜!」
2人でクスクス笑い合った隙に
オレはさっきのやっくんのように
チラリと腕時計を見て、
思いきって檜原さんを誘った。
「この後、予定大丈夫だったら、
昼メシ一緒にどうですか?」
「え…?」
「及川さんの愚痴、聞いてくれない♪?」
「…‼︎それは重大任務ですね♪」
一瞬、檜原さんの頬が
赤くなったような気がしたのは、
オレの気のせいだろうか?