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〜Lemon Candy Story〜

第38章 -月夜-(月島明光)


月島さんに連れて来られたのは、
1人で来たらまず迷子になりそうな
うっかりしていたら見逃してしまいそうな
そんなお店だった。


Cafe myosotis


「カフェ…?ミ…?」


小さな小さな看板があったけど、
わたしは読めなかった。


「カフェミオソティス。
カフェもやってるけど、今日はバーだ。」


カランカラン…


月島さんは慣れたように
店に入って行ったので、
わたしは慌ててその後ろをついて行った。


「いらっしゃ…って、な〜んだ。
明光クンかよ。」


「相変わらず客に失礼な店だなぁ。
そんなんだから、
あんま人来ねーんじゃねーの?」


独特な髪型のバーテンさんが
愛のある憎まれ口?で出迎えてくれる。


たしかに今はお客さんはいない。


外からの見た目より中は広く、
壁一面が本棚になっている
不思議な空間のお店だった。


「って、明光クンまさかの女連れ⁈」


わたしが月島さんの後ろで、
お店をキョロキョロ見ていると、
バーテンさんはわたしに気づいたのか、
声を掛けてきた。


「えっ⁈あの…⁈ちがっ…」


「違うのかよ?」


「…っ⁈」


”違うのかよ?”


そう言ったのはバーテンさんではなく…


月島さんだった。


「え?あの…」


あ!深い意味ではないってコト⁈
たしかにわたしは
月島さんと来てるんだし…
お…女連れ…ではあるよね⁈


「明光クン、フラれてやんの〜♪」


って、わたしが1人テンパっていると、
バーテンさんが大笑いしていた。


「うっせぇ、クロ‼︎
まだちゃんと告ってねぇんだから、
フラれてねぇっつーの。」


…っ⁈


「んじゃ、ウチの店来てねーで、
さっさと告ッてヤるコトヤれよー。」


「へぇ。クロも言うようになったなー。
どの口がそんなコト言うんだー?」


月島さんはカウンターの奥にいる
バーテンさんに手を伸ばし、
ニヤリとしながら、
ほっぺをむにゅっとしていた。


「いふぇっ…」


「とゆーわけだから、奥の部屋貸してね?
んで、なんか腹にたまるうまいもん作っといて♪」


「はぁ?」


「うしっ‼︎檜原、行くぞ!」


「あの…ちょっ…月島さん⁈」


月島さんはわたしの手を握ると、
ポカンとしたままのバーテンさんを置いて、
奥の部屋に入って行った。

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