第36章 -お隣-(岩泉一)
「はい…」
ガチャ…
「…っ⁈」
「さっきは
ありがとうございました!」
ポカンとしてる岩泉さんの手に
桃の入った袋を持たせる。
「あの‼︎やっぱお礼したいから!
桃…キライじゃない…ですよね?」
わたしが不安げに見上げると、
岩泉さんは困ったように
顔に手を当てて俯いた。
やっぱり迷惑だったかな…。
「キライじゃねぇ…けど…」
「それなら‼︎」
「…って…どうやって…んだ…?」
「…?なんですか?」
岩泉さんはボソボソと何か言うが、
全部聞き取れない。
「〜っ‼︎だからっ‼︎
桃ってどうやって食うんだ⁈」
「え…?」
今度はわたしが
ポカンとしてしまう番だった。
「岩泉さん…もしかして…」
岩泉さんの顔が
どんどん真っ赤になっていく。
「桃…自分で切ったコトない?」
「…⁈………。」
黙っているというコトは、
イエスというコトなんだろう。
「ふふ…岩泉さん…かわいい‼︎」
岩泉さんのギャップ⁈
あ、イメージ通り⁈
とにかく一見怖そうな
見た目とは裏腹な岩泉さんが
可愛くてしかたない。
「う…うっせぇ!」
怒鳴られても全然怖くない。
わたしは暫く
クスクス笑ってしまい、
笑いが止まらなかった。